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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
六話:間合いの時間
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魔法少女『レイナ』は、ハンディキャップになるキャラクターだ。

対人戦において、リーチの短さは致命的だ。

全キャラで最も短いレイナは、それだけで不利。

可愛くみせるアイドルのようなポーズは、プレイヤーのヘイトを高くする。

まあ、その反面キャラ人気は絶大なわけだが。成人系の漫画なんかもたくさん出ているぐらいだから。


そして、俺の前で杏那は迷うことなく『ユズ』を選んでいた。

かくして、テレビの中でバトルが始まった。

俺と杏那は、コントローラーを持って画面に集中していた。


「これなら俺、ガチでやるから」

「そのガチを倒せば、あたしも本物ね」

キャラ性能的にいってユズは、レイナと相性もいい。

スピードこそレイナに僅かに劣るが、パワーはユズの方が上。

しかも手数の速さに、リーチの長さも圧倒的にユズが上回る。

当然ユズは攻撃の速さと、リーチの長さを生かして攻めて来たのだ。


「だけど、それだけじゃ勝てない」

俺はレイナを上手く操り、素早いユズのラッシュを避けていた。

「右に避けたり、左に避けたり、ちょこまかと」

ユズの攻撃コンボが、なかなか当たらない。俺はレイナを操って、ユズの攻撃をうまく防御していた。


「前にも言ったけど、格闘ゲームはターン制だぜ」

そう言いながら一瞬の隙をついて、レイナの短いパンチが入った。

カウンター気味に入ったパンチから、連続コンボを叩き込む。ユズは、コンボからの脱出を図ろうとした。

だが、フェイントを入れながら攻撃を入れるレイナのコンボから逃れられない。

そのままユズは、倒された。レイナが一ポイント先取。


「むうっ、あんなのずるい!」

「あのコンボは、お前が昨日弱いっていったレイナの技だ」

「ううっ、ムカつくっ!」

こうして杏那のヘイトが、さらに上がった。

それでもレイナを操る俺は、ユズの攻撃は全部手に取るように分かっていた。

攻撃こそ早いけど、直線的で当たらない位置がわかる俺はレイナをギリギリの位置に動かす。

そして攻撃の切れ間に、素早く潜り込んでコンボを叩き込んだ。


「二ポイント、あっさり取られたんですけど」ふてくされる杏那。

「やっぱりダメか……」

「何がダメよ、あたしは諦めないから!」

杏那は再び戦う。少し賢くなったのか、ユズの攻撃コンボを変えてきた。

だけどゲームをやりなれている俺には、つけ刃の作戦を見切れないわけがない。


「コンボの形がバラバラ」

攻撃の切れ目を狙って潜り込ませ、あっという間にレイナのペース。

同士打ちの二発を食らったが、レイナが三ポイントを奪っていた。


「なんで、なんでそんなに強いのよ?」

「ああ、その件だけど」

そんな時、庭の方から車が入ってくる音が聞こえた。

母が戻ってきたから、留守番から解放された瞬間でもある。


「これから出かけるぞ」

俺は、ちらりと窓から見える母親の車を見て杏那に告げていた。



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