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祈里が、まもなくしてトイレから帰ってきた。
祈里は、今日はおとなしく勉強をしていた。
俺と杏那が、『リアルファイター5』でスパーリング中。
よくゲームをしている中で、集中して勉強できるよな。
杏那の『ユズ』は、俺がランダムで選ばれた『チョ・イルテン』と戦っていた。
チョ・イルテンは、テコンドーのオリンピックの金メダリストという設定でキックが得意。
ただし、テコンドーの選手のような道着は着ていない。
むしろライダースーツにヘルメット姿、ただのバイクのライダーにしか見えない。
ランダムに選べば、『チョ』のような不人気なキャラが選ばれるのはあるあるだ。
確かに、俺も祈里もあまり進んで使わないキャラではある。
「このキャラもいるの?」
「『チョ』はいるよ、しかも上手い人が使うと強いし。これとか」
そう言いながら、画面のライダースーツの男は構えを変えた。
右足をあげて、鶴のように立っていた。
「これって?」
「『チョ』は二種類の構えがある、それで技の派生も違うしなにより攻撃範囲も違う。
これは鶴の構えという、鷹の構えもあるが」
「何が違うの?」
「簡単に言うと攻撃のリーチが違う。例えば同じ二回キックでも」
鶴のポーズで、キックボタンを二回押す。
すると、ミドルキックを上と中段に蹴り込んでいく。
距離も長く、間合いは違うのだ。
「こっちが鷹の構え、ちなみに構えチェンジはパンチ、キック、ガード同時押し」
すると、右足を下ろして、左足を前に出す。左手をガードするように構えていた。
そのままキックボタンを二回押す。
すると左足で膝蹴りをしたあとに、そのまま踏みつけてきた。
「同じコマンドなの?」
「同じコマンド、でも構えで全然違う」
「奥が深いのね」
「当然、間合いも変わってくるわけだが」
「間合い、距離のことね」
「うん、このゲームは3Dゲームだから奥行もあるし。それ以上に、やはり大事なのは相手との距離」
説明をしているさなかに、杏那のユズが俺の『チョ』をボコボコにした。
結局五ポイントを奪って、ユズが勝っていた。
「確かに距離は大事よね」
「じゃあ、試験するか。今から俺が使うこいつに勝ってみろ。俺はガチでやるから」
そう言いながらキャラクター選択画面、俺は魔法少女『レイナ』を選んでいた。




