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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
六話:間合いの時間
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朝ごはんは、いつも俺の母が用意してくれる。

俺の父親は、朝から出かけていた。今日は、休日出勤で本社勤務らしい。

母親も車で、駅まで送り迎えをする。

そんなわけで、家には俺と杏那と祈里で留守番中だ。

母親がいないので、すぐに外に出ることはできない。


「今日は、夕方には帰らないと」

「バイトだよな、五時からだっけ?」

「うん」杏那の時間は、最初に確認していた。

そんな杏那はゲームをしていた。俺と『リアルファイター5』をしている。

リビングの後ろテーブルには、祈里がいる。ノートを広げてペンを握っていた。

たまに、こっちの方を見ているようだけど。


「祈里、部屋で勉強したほうがよくない?ここ、うるさいし……」

「いいの、こっちのほうが集中できるから」

いや、俺が気になるんだよ。あの話もできないし。

そう言いながらも、ゲームでは俺は手を抜きながら戦っていた。

杏那は『レイナ』を使い、俺はランダムでいろいろ使っていた。


「久しぶりに杏那と戦うが、だいぶ強くなっているな」

「そう、ありがと」杏那は、ちょっと照れくさそうだ。

最初の頃と比べると、あからさまに動きがいい。ぎこちない3Dの操作も手馴れていた。


「あっ、ちょっとトイレ!」

そんな時、テーブルで勉強をする受験生祈里が立ち上がった。

そのまま祈里は、トイレに向かった。


コントローラーを持っていた俺は、杏那と二人きりになった。

キャラクター選択で、杏那は『ユズ』を選ぶ。

ゲームの音楽だけが流れ、俺は杏那の顔を見ていた。

俺はそんな杏那を見て、覚悟を決めて口を開いたのだった。


「杏那、あのさ……」

「なにかしら?」

「まさか、あのタンスの中身……」

「見たわよ、ちゃんと!」杏那は軽蔑する目で、俺を睨んできた。

やっぱりな、と俺は女の子に見られたお宝(成人向け雑誌)を後悔していた。

もちろんそこには『リアルファイター6』で人気のある『レイナ』のお宝、あの画像のシロモノもあった。


「でも、男の子だからね……しかたないわ」

だけど杏那は時折、悲しそうな顔を俺に見せていた。

やばいな、相当哀れだと思われているだろうか。

クソッ、あのお宝、そうじゃなくて、アレを、アイツのことを話さないと。


「杏那、それより今日の予定だけど夕方まで時間あるよな?」

「え?」

「母親が帰ったら、一緒に出かけないか?」

俺は思わず、誘っていた。それを見て、杏那はじーっと俺を見ていた。


「その前にキャラ選んで!」

画面では、気づいたらキャラクター選択時間は0になっていた。



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