007
昼間、自転車で俺は移動していた。
通学は自転車だけど、学校からかなり近い位置にゲーセンがあった。
徒歩三分なので、ほぼ毎日行きやすい。大通りであるが、繁華街から少し離れてはいた。
流石に、由人は俺と一緒ではない。元々、駐輪場まで一緒に帰ることが多いが。
残暑の暑さを凌ぐ、清涼剤のようなゲーセンという赤い建物。
ゲーセンの奥、ビデオゲームエリアに行く。
やはり、磯貝は俺に『リアルファイター6』を教わりたいようだ。
とりあえず、俺はベンチに腰掛けた。磯貝も同じように腰掛けていた。
「やらないの?」
「ゲームの名前すら知らないようだから、とりあえず説明は先にやる。
まずはこのゲームの名前は、ちゃんと覚えたよな」
「『リアルファイター6』でしょ、あたしは頭がいいのよ」
「なら、どんなゲームだ?」
「相手を殴って倒すゲームでしょ。ねえ、この上の数字は?」
「それは制限時間、見ればわかるだろ」
磯貝がゲーム画面の時間を指差して、俺に聞いてきた。
上の数字が、一秒ごとに1ずつ減っていく。
「制限時間って、なくなったらどうなるの?」
「それはな、横にライフゲージがあるだろ。
制限時間内に決着つかなければ、ライフの多い方が勝ちだ。
そういえば、磯貝はちゃんと金があるのか?」
「な、なんで急に所持金を聞くの?」
「当たり前だろ、プリクラとかやったことあるだろ?ここはゲーセンだし」
「一応あるけど……あたしをちゃんと強くしてくれるんでしょうね?」
「初めてみたいだし、まずはちゃんと予算決めておけ。
ゲーセンでドップリはまると高校生だから、すぐに金欠になるぞ」
「わかっているわよ」
磯貝は俺の忠告を、一応聞いているようだ。でも、なんか不機嫌な顔を見せる磯貝。
「それよりも、あたしはどうやったら強くなれるの?」
「まあ、このゲーセンは比較的優秀だからな。とりあえず今、やっている奴が居るだろうし」
それは、俺の目の前にやっている乱入台。
二台が向き合うように置かれているゲーム筐体、奥ではよく知らない青年がゲームをやっていた。
やっているときはゲーム画面が動いて、見ただけで分かった。
ついでに言うと、下の方に連勝記録が表示されていた。
「まずは、俺があの六連勝のヤツに挑んでクリアするから。そこで見ていて」
「え、六連勝?どこでわかるの?」
やはりなにも理解していない磯貝を背に、俺はゲーム筐体に向き合うようにイスに座った。




