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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
六話:間合いの時間
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朝、俺の部屋に一人の侵入者がいた。

生まれつきに朝は弱い俺は、全く気づかなかった。

静かにドアが空いて誰かが、入っていたのだ。

部屋の隅にあるベッドでは、俺が一人で眠っていた。


(誰かいるのか?)夢の中で、俺は声をかけた。

返事がない。反応がないことが分かると、おぼろげにベッドの中に体を委ねていた。

だけど俺の眠る真横で、一人の女の姿が見えた。

顔は見えない。いや、なんだか怖くて見ようとはしなかった。


それでもちらりと見ると、短い髪の杏那だ。祈里から借りた、ピンクのパジャマを着ていた。

気づかない俺の部屋を、静かに見回っていた。

俺の部屋はタンスと本棚、ベッドと学習机と言うシンプルな作り。

余り物を置かないので、部屋が広く見える。


(男の子の部屋……)杏那は俺の眠っているそばで、本棚を見ていた。

本棚には昔の教科書や、文庫本更には辞書ぐらいだ。

だけど、次に観音開きのタンスを静かに開けた。


(わかりやすいわね)

杏那はそのままタンスの下に置いてある、布をどかす。

そこに、俺の宝物は隠れているのを発見した。

宝物を発見した杏那は、顔を赤くしているだろうか。


流石に俺が隣で寝ているので、表現は出さない。

そんな杏那は、タンスを締めないで学習机の椅子に座る。

学習机の隣には大きな窓、無論カーテンはしまっていた。


(あれ、これは……)

杏那は窓のそばにある学習机に飾ってあった、写真立てを見ていた。

そこには、中学入学ぐらいの俺と小学生の祈里が写っている写真。

それを杏那は、羨ましそうに見ているのだろうか。


(でも、和成の着ているのって、柔道着かしら?)

写真の俺が、白い道着を着ていることに気づく。

そして、さらに杏那は学習机の下にある引き出しを見つけた。

少し開いていた引き出しをゆっくり開けると、そこはいろいろ散らかっていた。

だけど赤く立派な冊子アルバムを、杏那は見つけた。


(あっ、和成のアルバム)

杏那はゆっくりと音を立てずに、アルバムを学習机の上で広げた。

俺の小学校の卒業アルバム、写真を一枚ずつ見ているようだ。運動会、クラスの集合写真。

杏那は唯一知っている人間の俺を、アルバム内で探しているが驚いた顔に変わっていく。


(あれ、いなくない)

そこには俺の写真がないのだ。

俺の写真を探すように、杏那はアルバムのページをめくっていた。


「あ、いた」

そして初めて見つけた写真は、クラスの集合写真。

だけどそれは一人だけ別撮りされた、写真だった。端っこの円の中、そこに俺の写真があった。


「な、なにがいたんだ?」

そんな時、俺は寝返りを打っていた。

横向きに寝ている俺は、学習机の杏那と視線が合っていた。



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