065
『リアルファイター6』で、杏那はゲームをやっていた。
『レイナ』を使い、ゲームをじっくり進めていた。
初心者台は、一人でずっとやるには適していた。
後ろの三セットある乱入台は、常に入れ替えが激しい。
サラリーマンや、学生が入れ替わって戦っていた。
「普通に、進めないんだけど……」
杏那は、レイナの動きに苦労していた。このレイナだけで、既に三百円を使っていた。
リーチは短いし、攻撃は当たりにくい。無論ダメージも低い。
最初はランダムの四人目で負けて、二回目は髑髏丸で負けた。
そして、現在はランダムで戦う四人目を突破したところだ。
「コマンドを、ちゃんと見ているか?」杏那の後ろにいる俺が、苦戦続きの杏那に声をかける。
「使える技が、わからないわ」
単体技も、使える技が限られていた。
しかも、本人がリーチ短いので当てるのだって一苦労だ。
「まあ、頭を使え」
「使っているわよ」
そんな中で、五人目に戦う相手を倒していた。
ポイントを三ポイント上手くとって、六人目に変わっていく。
「でも、これだけリーチ短いとサイクロプス・改はきつくない?」
「そんなにきつくはないよ」
「え、どういうこと?」
「レイナは「弱い弱い」ってよく言われるけど、弱くないんだよ」
俺はそう言いながら、杏那の動きを見ていた。
六人目の髑髏丸は、杏那が苦手らしく攻め込まれて一ポイントを奪われてしまう。
すると、杏那の隣に座っていた祈里が黙っていられないのか口を開いた。
「もう、磯貝さんなら倒せるじゃない」
「え、祈里?」
「だって、ユズとレイナって攻め方が似ているし」
「似ている?」
「リーチの短さも、手数の速さもある。
ユズの場合はダメージがちょっと高いし、技が使えるのが多い。
ユズは『ユズコンビネーション』やワンツー、キック技で押すけどレイナは違う。
例えば……後ろPP長押しとか」
「このワザ?」
そう言いながら、杏那が祈里の言うとおりのコマンドを入れていた。
「ああ、言っちゃったな」と俺は、苦笑いをしていた。
すると、レイナは両手を前に突き出し、人差し指を銃のように突き出す。
「それは禁止だろ、祈里」
「まあまあ、いいじゃない」
そう言いながら、レイナが放つのは『マジカルガン』と喋りながら放つ。
指先からレーザービームが飛び出して、少し奥に居る髑髏丸に命中した。
「これを連発していれば、コンピューターならどんな相手でも勝てるわ」
祈里が、怪しく笑いながら言っていた。それは、レイナが対コンピューター戦で最も楽な方法だ。
一つの技を連発して、髑髏丸から連続で三ポイントを奪う。
「ありがと、祈里ちゃん」
「うん、いいの」祈里が杏那に感謝をされていた。
だけど、俺は一つのことに気づいた。それは、今日の杏那の動きを見て判断したことだ。
「杏那、ちょっといいか?」
「え、何?」
「明日日曜だし、今日、ウチに泊まりに来ない?」
再び、俺は思い切って誘っていた。杏那は、ちょっと考えて「うん」と返事した。




