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俺の妹は『リアルファイター6』では、極めて優秀だ。
幼い頃から俺と一緒にゲームをしていたことが、大きく影響しているが。
初心者台に座っている、初心者ではない祈里。
そして、『レイナ』を選んで進んでいく。隣で杏那が、食い入るように画面を見ていた。
「うわ、すごい」それは祈里の操る『レイナ』の動きだ。
だけど、それ以上に杏那が祈里のレバー裁きに見とれていた。
祈里のレバーを持つ持ち方には、特徴があった。
レバーの丸い玉を、左の親指で支えて左人差し指で支えるだけ。
俺とは異なるフォームから、画面内の小さな魔法少女を軽快に動かす。
「早い、なんでこんなに動けるの?」
「レイナは素早いのが特徴よ」
あっという間に間合いを詰めて、再び華麗に離れていく。
短いリーチのパンチを的確に当てて、離れるさまはプロボクサーみたいだ。
そして、あっさり五人目を倒していた。
「相手の攻撃が、空を切っていく」
「攻撃の外れる瞬間に合わせて動く、これが基本よ」
「へえ、いろんな戦い方があるのね」
「当たり前よ。キャラにはそれぞれ個性があるんだし、戦い方も全て別なのよ。
まあ今のところはコンピューターだから、特別工夫しなくても問題ないわ」
祈里は喋りながらも、ライバルキャラである忍者『髑髏丸』を倒していた。
「要はそのキャラクターの強さを、見つけること」
「強さ?」
「全てのキャラクターに優位性があって、有効な技もある。
どんな人もそう、どんな人間にも必ず強みがあるって……お兄ちゃんが言っていた」
「祈里、それは……」確かに言っていたかもしれないが、それを暴露されて俺は少し恥ずかしくなった。
祈里の言葉を、真剣に聞き入っている杏那。
祈里は手馴れた動きで、アントニーもサイクロプス・改もあっさりと倒していた。
杏那は「すごい」と漏らしながら、祈里が倒すさまを最後まで見ていた。
「今度はあんたの番よ」祈里はエンディングロールをスキップさせて、華麗に立ち上がっていた。




