062
サイクロプス・改に惜しいところで負けた杏那。
杏那はコンテニューをしようとしたが、俺の言葉を思い出してやめていた。
ゲームオーバーになり、再び一から始める杏那。
俺はずっと隣で、杏那のゲームを見ていた。
「ねえ、技が変わっているなら、初めから言ってよ!」
「食らったほうが覚えるだろ」
「でも、情報があっても良くない?」
「いや、むしろ対応力を上げるためだ。
一度失敗したほうが覚えるし、杏那のスキル向上にもつながるからな」
「そうですか、師匠」不満そうな顔で言いながら、ユウトを選んでいた。
「あの技の対処法は、分かるか?」
「見た感じ、中断のガード不能でしょ。下段にしゃがめばいいの?」
「すごいね、正解」俺は、パチパチと乾いた拍手をした。
「ねえ、ユウトで、ノーコンテニュークリアをしたら終わり?対戦?」
「そんな訳は無いぞ」
「えー、なんでよ?」
「全員のクリアって言わなかったっけ?」
「え、ユズ以外全員ってこのゲームのキャラクター、一体何人にいるのよ!」
「全員だ、まあアンソニーはランダムキャラだから除外はするが」
「そんなことをしたら、ユズを忘れちゃうじゃない!」
杏那は不満を言いながらも、ユウトで最初のステージを三連勝で勝ち抜けた。
「ユウトも、すっかり慣れただろ」
「戦い方が分かっていたからね」
ふてくされる杏那は、ゲームを続ける。俺はゲーセン筐体のそばにある、隙間にあるファイルを取った。
「これ、コンボ表。キャラの技の名前とコマンドだけが乗っている」
そこにあったファイルを広げて、杏那に見せていた。
「そ、そんなものがあるなら便利じゃない!」
「まあ、攻略本よりは書いていないけど、リアルファイター6には新キャラもいるし」
「あのさ、この子もやるの?」
そう言いながら、杏那が操る『ユウト』は二人目を倒し、三人目になっていた。
その三人目こそ、魔法少女の女の子『レイナ』だったのだ。




