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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
五話:第二の禁止令
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アンソニーは特殊なキャラだ。

ラスボス以外の全てのキャラを真似る特性があった。

ただ、見た目は全く変わらないので、赤タイツ男にしか見えない。

だけど、上級者ともなれば最初の構えだけでアンソニーが誰なのかが分かる。


結局姿だけに惑わされなければ、攻撃パターンはそのキャラに準ずる。

ユウト同士の戦いも、杏那は対応していた。

見た目だけに惑わされなければ、あくまでユウト。


ユウトとユウトの戦いでもパターンが決まっていれば、負けることはなかった。

そして三戦目はラッキーな相手で魔法少女の『レイナ』、四戦目も、慣れている女キックボクサー『ユズ』だ。

いずれも勝利を収め、最後のステージになっていた。


「ゲーセンで、いきなりラストに来たね!」

「ああ、ウチのゲーム機のレベルは難易度一段階上だから」

「それにしても、ユウトって普通に性能よくない?

なんで最初に、あたしに言ってくれないの?」

「性能いいのは、はじめの方にも言ったけどな」

ユズが可愛いとかで、選んだのは杏那だろ。などと思いつつ、俺は苦笑いを見せていた。


「て、ラストもこいつなわけ」

最後のステージは、青い巨人が出てきた。

それは『リアルファイター5』のあのサイクロプスによく似ていた。


「これって……」

「『サイクロプス・改』」

「何よ、改って?」

「そのままの意味、ゲーム設定だとドクタージーが行う人体実験で……」

「うんちくはいいわ、前のやつと何が違うの?」

「ほぼサイクロプスと一緒だが……」

サイクロプス・改と、ユウトの戦いが画面で始まっていた。

俺との会話を切り上げ、杏那はレバーを握っていた。


リアルファイター5でも、サイクロプスは杏那が一番手こずった相手だ。

家でやったゲームも、コンテニューが一番多いのがサイクロプス。

しかも、サイクロプスとの一部の技が変わっている。


「相変わらず、間合いを離す技が多いのね」

ユウトの間合いを詰める技を、ほぼ知らない杏那。

回り込みを使いながら、サイクロプス・改の間合いを詰めていく。

それでも難易度ハードでシビアなタイミングを戦い抜けた杏那は、サイクロプスの攻撃にも対応していた。


「やっぱりノーマルなら、動きが違うな」

なれないキャラとのハンデを背負っているだけに、一進一退だ。

互いに二ポイントを奪い合い、最後の勝負になっていた。

ユウトの使える技を見つけた杏那は、攻撃を組み立てながら戦う。


だけど、サイクロプスの重いパンチが命中した。

ガードが僅かに間に合わなかった。思いっきり吹き飛ばされる。

そして、サイクロプス・改はぐるぐると回り始めた。


「あんな技……あったかな?」

そう、サイクロプスには唯一ない技、正確には『リアルファイター6』で追加された技だ。

離れると使ってきて、そして腕をコマのようにグルグル回してきた。

コマのように回転ながら、杏那のユウトに向かって来た。


(とりあえずガード、中段を)杏那は、ガードを試みた。

だが、そのガードを吹き飛ばして、ユウトは倒された。

ノックアウトの声が聞こえて、ユウトの敗北が決まっていた。



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