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覚醒したジョニー、赤い幕は攻撃力アップ。
ダメージが二割増しで、ほぼカウンターの時と同じダメージ値だ。
だけど、杏那は冷静にユウトを動かしていた。
「こっちに動いて……こうね」
コントローラーからレバーに変わったばかりなのに、対応が早い。
思いのほか杏那のレバー操作に、手間取ることもないようだ。
初めは、「遅い」とか愚痴ばかり言っていた杏那だが、コンピューターの戦いは慣れているようだ。
コンピューターの使うキャラは、ゲーセンも家庭用も大きく変わらない。
使える技は、ナンバリングが変わってもそれほど変わらないし。
だから、覚醒ジョニーに対しても攻撃がしっかり見切れていた。
そして、最初の難所であるジョニー戦も楽々に勝利した。
「やった、勝ったわ!」
杏那はジョニーにも、三ポイントを奪って次のステージに進んだ。
そんな中、次のステージは赤い全身タイツの男『アンソニー』。
「あれ、これってトレーニングモードにいなくない?」
「ああ、トレーニングモードにいるあいつの最新版らしい」
「最新版?」
「こいつ、実はある特徴があるんだ?」
「特徴?」
「ああ、よく見ていろ」
戦う前に、ちょっと長いロード画面が入っていた。
そこで、アンソニーが構えていた。背中を丸めて、拳を構えていた。
「構えが、変わった……」
杏那は新キャラの変化に、驚きがあった。
相手のことを探りあいながら、ユウトで戦う。パンチでアンソニーが杏那のユウトを追い詰めた。
「でも……この構えどこかで……」
杏那は疑問に思いながらも、新キャラアンソニーの動きに対応できずにポイントを奪われた。
「あー、結構強いわね」
「わかったか?」
「うーん、なんか戦ったことあるような感じがするのよ。まるで『ジョニー』みたいで……」
「みたいじゃなくて、そうなんだよ」
俺は、そう言いながらロードの長いゲーム画面を見ていた。
ロードを終えて、二戦目のアンソニーの構えがまた変わっていた。
それは、ユウトによく似た武道の構えを見せていた。
「こいつ、一戦ごとにランダムでほかのキャラクターと同じ動きをするんだ」
そう、そしてユウトは『ユウト』と同じ構えの赤いタイツの男と戦っていた。




