057
ゲーセンに三日ぶりに来た杏那は、とても嬉しそうだ。
まるで山奥に住んでいる少女が、両親に町中に連れてもらったような喜びようだ。
制服姿で、クルクルとダンスを踊るように回っている杏那。そんなに嬉しいのかよ。
そして、俺たちの前にはビデオゲームは今日も稼働していた。
「あたしは、とうとう帰ってきたわよ!」
学生鞄を持って、腰に手を当てて、ゲーセン前で女子高生が叫ぶ。
「あまり叫ぶな、恥ずかしい」
「だって、懐かしいんだもん!」
「そうよ、お兄ちゃんはいつもこんなところに磯貝さんと来ていたんだ」
そう言いながら俺の腕をしがみつくのは、セーラー服の少女で俺の妹の祈里だ。
実は、土曜日で午前中授業だった俺の学校。
杏那と、初めてゲーセンに行くことにしていた。
駐輪場から自転車を持ってきた俺の前、高校の校門に祈里が待ち伏せていた。
「祈里は、学校は?」
「今日は休みで、学校見学に行ったから」
確かに、今日は学校見学の日だと言っていたな。俺の学校には、見学に来ていないようだが。
資料が入っているだろう手提げバックを持ち、セーラー服姿の祈里。
俺と杏那がゲーセンに行くことを知った祈里も、俺に同行していた。
「ねえ、ゲーセンも久しぶりね」
「ああ、結構遠いからな」
「やっぱり松本中央は、近くていいね」
「ゲーセンが、学校選びの基準かよ?」
苦笑いをしている俺だ、まあ俺も否定はできないわけだが。
「ねえ、乱入するの?それとも初心者台?」杏那が俺に聞いてくる中、祈里が乱入台を見ていた。
「お兄ちゃん、ちょっと乱入してくる」
そう、祈里の前にある乱入台は誰かがやっていた。
ゲーセン封印している祈里は、迷うことなく乱入台筐体の椅子に座ってお金を入れていた。
お金と同時に、財布からカードを取り出していた。




