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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
五話:第二の禁止令
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塾のない祈里は、大体五時ぐらいに帰って来る。

セーラー服姿の祈里は、リビングに戻っているとすぐさま俺のロバのソファーに座った。

帰宅して祈里がコントローラーを握るのは、わずか五分の出来事だ。


「勝負しなさい」杏那は挑発し、祈里は逃げも隠れもしない。

コントローラーを握った祈里と杏那、彼女らの前にあるテレビ画面は、二人の戦いを映していた。


祈里はいろんなキャラを使い、杏那と戦う。

今祈里が使っているのは、『ジョニー』というボクサーだ。

相変わらず杏那はユズ一択だ。最も俺は、杏那にユズ以外の使用禁止を命じているからだ。

そして画面上で、ある変化があった。


「あーっ、その技、使うのね!」

杏那が祈里に対して、ようやくポイントを取るように変わっていた。

杏那の連続攻撃に、祈里が押されているシーンも目立つようになった。

何度も戦っているので、祈里がそれでも手を抜いているところもあるが。

祈里は一本でもポイントを取られると、大人気なくなり険しい顔で本気モードに変わっていく。

そして五ポイントをあっさり奪い返して、勝ち誇っていた。


「私には、まだまだ勝てませんよ」

「何よ、もう一回勝負しなさいっ!」

勝ち誇る祈里に、杏那はもう一度を要求した。

だけど、祈里は疲れたのか俺の方を見ていた。


「お兄ちゃん、交代して。トイレ、行きたいし」これも慣れた光景だ。

「仕方ないな」コントローラーを受け取って、俺が杏那のそばに見ていた。

「あー、勝ち逃げなんかずるいわよ!」

「勝ち逃げじゃないわ、ちょっと休憩なんだから!

代わりにお兄ちゃんが、あんたの相手してくれるって」

立ち上がって、本当にトイレに向かった祈里。

それを見て、不満そうな顔を見せていた杏那。


「だいぶ、エキサイトしているな」

「していないわよ!」不満そうな顔で杏那は、キャラクター画面で『ユズ』を速攻で選択した。

「まあ、杏那もだいぶ強くなったしな」

俺も喋りながら、一人のキャラクターを選択した。

選んだのは『ファン・ジャンチー』、中国拳法の老人だ。


「それ、あんまり祈里は選ばないわね」

「ああ、このキャラはクセがすごいからな」

「クセ?」

「一言で言えば、上級者向けのキャラ。まあ俺の持ちキャラでもあるわけだが。

それより杏那、明日の土曜日はバイトだっけ?」

「バイトは、水、木と隔週日曜ね」

「そうか。じゃあ明日もほぼ一日、使えるな」

「うん、出来る日は全部お願い……迷惑をかけるけど」

「明日から、久し振りにゲーセンに行くか」

「え?」驚きもあるが、同時に嬉しそうな顔を見せる杏那。

「だいぶ、お前も強くなったしな」

そう言いながらも俺は、コントローラーで『ファン』を操作する。

巧みに操って、杏那の『ユズ』を上手いこと倒していた。



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