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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
四話:アーケードモード
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磯貝 杏那は、初めて自力でリアルファイターのエンディングにたどり着いた。

サイクロプスに戦うこと三十回ほど、デス・ストロングに五回コンテニューしながら初めて見るエンディング。

それはユズという少女が、大会で優勝してスーパースターになって、原宿を歩く三十秒ほどの短い映像。

そのあと、スタッフロールが流れていた。それを呆然と見ている杏那。


「あたし、やったよね!」

「ああ、よくやったな」

「あたし、勝てた……サイクロプスに」

杏那が初めて、満面の笑みを浮かべていた。

今までに見せたことのないその笑顔は、眩しく杏那を輝かせていた。


「お、おう……すごいな、杏那」

俺はソファーの上から、頭の上でポンポンと頭を叩いてあげた。

今までは嫌がっていた杏那だが、ポンポンされても素直に喜んでいた。


そんな興奮する杏那がいる中、玄関から「ただいま」と声が聞こえた。

塾から帰ってきた祈里だ。直ぐにリビングで姿を見せていた。

セーラー服姿の祈里は、カバンを持って険しい顔でジーッと見ていた。


「何?あんた、まだいたの?」相変わらず祈里は、杏那に手厳しい。

「あたし、クリアしたのよ」立ち上がって、興奮している杏那は祈里の手を握った。

杏那のその態度を見て、祈里は困惑した表情になっていた。


「クリア?何を?」

「あたしはようやくクリアしたの!これ、これなのよ!」

興奮している杏那が、そのまま祈里の手を引いてテレビ画面を見せる。

だけど祈里は冷めていた。いや、何度も見たことのあるスタッフロールだから。


「別に、リアルファイターのスタッフロールでしょ」

「あたし、すごいでしょ。たった四日で完全制覇だから!」

「そう、それがどうしたの?」そう言いながら祈里は、直ぐにコントローラーを杏那から奪った。

スタートボタンを押すと、スタッフロールが中断された。


「私が、あっさりクリアするのを見せてあげましょう」

「おい、ちょっと祈里!」

なぜか笑いながら祈里は、余裕たっぷりの様子を見せていた。

だが、自分の最初のエンディングのスタッフロールを消された杏那は顔を赤くした。

目元をきりっと睨み、直ぐに2P用のコントローラーを手にした。


「その前に、あたしがリベンジしてやるんだから!」

直ぐに杏那は、怒って反応しようとした。

だが祈里が帰ってくる時間に、俺はあることを思い出していた。


「あっ、杏那。その勝負は、今日は俺が預かる」

俺は、コントローラーを持つ杏那の腕を掴んだ。

「えっ、なんでよ?」

「夜遅いからだ、送っていかないとな」

俺はそう言いながら、杏那に壁時計を見るように促していた。

そして、杏那もまた俺の言葉を渋々と理解してくれた。



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