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やはりラスボスであるサイクロプスは、一味違う。
というより『リアルファイター』シリーズのラスボスは、全てインチキのような強さだ。
杏那は、サイクロプス相手に五回コンテニューしたが全く歯が立たない。ポイントすら奪えない。
「苦労しているな、杏那」
「コイツ、むちゃくちゃ強いんだけど」
俺の母親が出したケーキを食べながらコンテニュー画面を、口惜しそうに見ていた。
「負けの理由は、わかるよな」
「近づけないし、ガードは遠ざけられる。サイクロプスがでかくて強すぎ」
ふてくされても、美味しそうな顔でケーキを食べていた。
「わかってはいるようだな」
「それに、ロックブラストも苦手」
サイクロプスが離れると、絶対に使ってくる技。
飛び道具で、ガード不能技で、ダメージも高い。
しかもサイクロプス自体はキャラの中で一番でかいのだけど、動きは決して遅くない。
攻撃のモーションが、スピード型のキャラとそんなに変わらない。
だけどデカさがあるので、スピードがあるけどダメージ判定のある攻撃をしてきた。
まさにチートだ。戦えば戦うほど、このサイクロプスがチートキャラだとよく分かって絶望させられた。
「これ、本当に勝てるの?」疑問の杏那。
「勝つんだよ」
「だけど、どうやって?」不安そうな顔の杏那。
「考えろ!俺は今回、ヒント出さないからな」
俺はそっぽを向いて、杏那を見守ることにした。
ケーキを平らげた杏那は、ふてくされながらも難しい顔で考えているようだ。
もちろん、そう簡単に攻略法は分からないようにしていた。
実は今までやった中に、そのヒントがあった。
それに気づくことができることこそ、今の杏那には必要だった。
「いったいなんなのよ、どうやって?」
杏那は愚痴ったあとに、カバンを取りだした。
通学カバンから出てきたのが、俺が貸した攻略本だった。
それを見て、俺は杏那の成長を感じていた。




