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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
四話:アーケードモード
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夕方、俺は自宅に杏那を連れて行った。

帰る前に、自宅には連絡をいれた。今日は火曜日で、祈里の方は塾もあるだろうし問題はない。

俺の自転車にある荷台に、杏那を乗せて走っていた。

それにしても二人乗りも、かなり久しぶりだ。中学の祈里以来だろうか。


必死にペダルを漕いで三十分、足をパンパンにしながら俺の自宅に帰ってきた。

家にかえって玄関で、俺の母親が両手を広げて出迎えた。

あいも変わらず天然風の甘い声で、笑顔を見せていた。


「また、連れてきたのね。杏那ちゃん」

「お、お邪魔しています」

「あらあら、ゆっくりしていってね」

「はい、ありがとうございます」

杏那は、俺の母親の前で猫をかぶるようだ。

杏那の母親の躾だろうか、優等生な対応を見せていた。

母親がベタベタと、絡んでくるが俺はそれを軽くあしらっておく。

さっさとリビングで、杏那をテレビの前に座らせた。


「やっぱり、リアルファイターなの?」

「そうだな。家庭用ゲーム機はモードも追加されているからな」

リビングで、一個しかないテレビを俺が独占する。

ゲーム『リアルファイター5』を起動して、モードを選択する。


「これって?」

「『トレーニングモード』練習するモードだ、本当は最初に初心者がやるべきだったけど」

この前は祈里が、なぜか最初から杏那との戦いを仕掛けた。

結局、最初の予定だった動きの確認や、基礎動作の練習に時間は使えなかった。

まあ、実戦をかなりやっただけに動きも良くなっているのも事実だが。


「まずは、ユズを選んで」

コントローラーを持った杏那に、キャラクターを選ばせていた。


そして、相手は無機質な銀色のタイツキャラだ。『アンソニー』と言う。

このキャラは『リアルファイター1』のラスボスらしい。

ただ、相手のライフは表示されていない。これがトレーニングモードの特徴でもある。


「練習って?」

「スタート押して、コンボモードを選ぶ」

「うん」杏那は、言うとおりにコンボモードを選ぶ。


「そしたら、右端にコンボが出るからそれを一個ずつ入力する」

「うん、最初はPPね」

技の名前は『ユズラッシュ』、パンチを二回連続で押すと、画面のユズがパンチを二連続で放つ。

入力が成功すると、次のコンボに切り替わった。


「よし、じゃあ、ユズのすべての技の入力を終えるまでな」

「わかったわ」

杏那は素直に、俺の指示に従っていた。



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