043
翌日の学校、俺は学校のテラスにいた。
時間的には、ちょうど昼休みだろうか。
そして、俺は今日も母親が作る弁当を持って学校のテラスに来ていた。
今日も夏の暑さが残るが、ほぼ全開のガラス張りの窓から風が涼しく吹きつけた。
冷たい風なので、蒸し暑さは昨日ほど感じられない。
テラスの長ベンチに、ポツンと一人座っていた俺。
だが、あっという間に静寂は打ち破られた。
「ちょっと、ちょっと、どういうこと?」
杏那だ、いつもながらにすごい剣幕でやってきた。
俺は杏那のことを気にしつつも、弁当を広げていた。
すかさず俺のそばに座って、じっと睨む。両手をベンチについて、上目遣いだ。
「なんで禁止なの?」
「禁止だ、昨日乱入しただろ。お前、お金ないな」
「うっ、なによ!」
「金は大事だ。お前の家は、すごい金持ちでもないだろし、バイトだってしているんだろ」
「し、知っていたの?」
「金の価値は、俺よりもわかっているはずだ!」
「う、うるさい!いいじゃない!それともあたしに、諦めろって言うの?」
「そうじゃない」
俺は難しい表情をしながら箸でつまんだ、小さな卵焼きを杏那の口に運ぶ。
「はふっ!」
「うまいだろ」
「う、うまいけど……」
口の中の卵焼きを、ありがたそうに咀嚼している杏那。
「いいか、ゲーセンには俺がいいというまで行くな。
それからユズのコンボは、コンボ表を見なくても打てるようにしろ」
「でも、ゲーセンに行かないと……」
「俺ん家でやる」
「え?」驚いた顔を見せた杏那。口の中の卵焼きはもうない。
「俺の家なら金はかからないし、後……俺が送ってやる」
「でも……」
「お前、飯をまともに食っていないんじゃないか?」
「そんなこと、ないわよ。ちゃんとご飯は白いんだから」
「白い?」
「な、何でもないわよっ!」
杏那は否定するも、彼女のお腹の虫は正直に鳴いていた。
「ほら、これでも食え」
俺は弁当の中にあるミートボールを、杏那の口に入れていた。
杏那はやっぱりうまそうな顔で、ミートボールを口にしていた。




