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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
三話:コンボ・コマンド
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杏那は、コンボを覚えたばかりだ。

一応俺は、杏那に対して使えるコンボは教えたつもりだ。

昨日杏那が、ユズを使うと宣言した時からだ。

乱入台の裏で竜二の反対側に座った杏那は、後からついてきた俺を見るなり顔を上げた。


「ねえ、どうやって乱入するの?」

「百円入れて、スタートボタンを押す」

「わかったわ」百円硬貨を取り出し、投入口に入れようとする杏那。

それを俺は、やっぱり止めようとした。


「だが、約束してくれ。お前だって、そんなに裕福ではないだろ」

「な、何を言っているの?」

「乱入台は負けたらその瞬間、ゲームが終わるんだぜ。

一回乱入台で負けて、再び戦いたければ百円かかる」

「そ、それがなんだって言うの?」

「金は大事にしろ、そういうことだ。だからこの戦いに負けたら、しばらく乱入台禁止な」

「わ、わかっているわよ。ちゃんと勝てばいいんでしょ!」

杏那は、それでも強気に硬貨を投入した。

俺はそう言いながら、しゃがんで杏那の側に座った。


「一応セコンドはする、今回だけな」

「うん……」そして竜二に杏那は乱入していた。

キャラクター画面が出て、もちろんユズを選ぶ。

ちなみに乱入された側は、キャラクターの変更ができない。

従って、対戦相手は『カムチャット』だ。竜二のメインキャラだから、ここはガチで戦ってくるだろう。


「『カムチャット』の戦いは、とにかく間合いを詰めるようにいけ。

少し距離が離れたら、カムチャットのミドルキックが的確に飛んでくるからな。

キック特化だから、カムチャットのキックはリーチも長くて技のモーションも早い」

「わかっているわよ」

「基本組立は……そうか、あのコンボは覚えているか?」

「あのコンボ?」

「『ドリミカルコンボ』」

「名前は知っているし、確かPPKP上PKKPだっけ?」

「まあ、もうひとつあるが、それを連発しておけ」

このコンボは、中級者までなら通用するだろう。

だが上級者の竜二に、これだけでは通用しないのは俺もよく分かっていた。


「あとは?」

「もう始まる、バトルが」

そして、ファイトの文字でバトルが始まった。

杏那の『ユズ』と竜二の『カムチャット』。

ゲーム三日目の杏那と、ゲーム歴三年以上の竜二。

乱入台だと、容赦なく完膚なきまでに叩きのめす竜二。

そして、俺の予想を大きく外れない戦いが画面の中で行われた。

『カムチャット』の五本連取で、竜二が圧勝していた。



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