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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
三話:コンボ・コマンド
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杏那の百円で対戦が終わり、次に待っていた小学生に席を譲った。

そのまま近くのベンチに座る。近くの自販機でコーラを買っている竜二。

俺のそばにいる杏那は、コンボをブツブツと繰り返し暗唱中。

俺は、ベンチのすぐそばにある乱入台をじっと見ていた。

誰かがやっている乱入台、そこでは五本制の乱入が行われていた。


「ふー、ガードだけだとつまんねえよな?」

「うんうん、あたしもそう思う」竜二に杏那が同意した。

「まあ、杏那は初心者だし、頼むよ」

「いいけど、本当に弟子だったんだな。和成の女じゃないんだな」

「当たり前だろ」俺はコンボを、暗唱していた杏那をちらりと見た。

不意に見る横顔が、由人が言うとおり可愛いようだ。

ショートボブの横顔は、真剣な眼差しだけど目も大きい女だからな。


「にしても、女が『リアルファイター6』とか……UFOキャッチャーぐらいしかやったことないな」

「あれ、竜二は女いたのか?」

「当たり前だろ、昔は兄貴の女を奪い取ったけど」

「嘘?ガチで?」

「いいだろ、お前に話す必要はない」

コーラを飲みながら、不機嫌に言っていた。


「でも、女か……」

「行ってくる」そう言いながら乱入台が空いたのを見て、竜二が乱入した。

そんな中、俺は隣の杏那に声をかけた。


「杏那、技は覚えたか?」

「うん、なに?」ブツブツ唱えているのを止めて、俺の方を振り向く杏那。


「ユズの技、だいぶ覚えていたな」

「そ、そう?まああたしなら、出来て当然よ」

「偉いぞ、杏那」俺は杏那の頭を、ポンポンと軽く叩いた。


「ううっ、それ……照れるじゃない」

「そうか?なあ、それより今から竜二が戦うから」

「あの竜二さんが?」

杏那のスパーリング相手、竜二はキャラクターの選択をしていた。

使ったのは、『カムチャット』ムエタイの選手だ。


「あれが、本物のムエタイだよ」

画面には日に焼けたような黒っぽい肌で、赤い髪のモヒカン男がにやりと笑っていた。



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