037
俺は適当に乱入台をクリアさせて、初心者台に向かう。
平日の夕方で、小学生がやっていたが終わるのを待って台に杏那を座らせた。
2P側には、俺ではなく代わりに竜二が座った。
俺に負けて、渋々と従う竜二。そして竜二に要求していた。
「杏那が使う『ユズ』の、サンドバックになってくれ」
「しょうがないな、男と男の約束だからな」
一応杏那が初心者ということは話してある、竜二のプレイヤースキルなら、杏那に負けることはない。
だからこの言葉を、あえて忠告しておこう。
竜二が選択したのは『レイナ』、竜二の趣味に全然合わない魔法少女だ。
ツインテールの可愛い女の子が、可愛くポーズを決めた。まさに幼女の趣味キャラだ。
最弱キャラと言われるネタキャラ『レイナ』だけど、実はこれにも理由があった。
「杏那、竜二の使う『レイナ』はほかのキャラと違って、すごく小さいから当たりにくい。
上手く命中させないと、ダメージ通らないぞ」
「うん、わかったわ。でもこんな小さな女の子を殴るのは気が引けるわね……」
「お前、俺にレイナ使わせるだと……」
「男に二言はないよな、竜二?」俺が腕を組んで、ゴネる竜二を無理矢理納得させた。
「わかったよ、クソ!」
「じゃあ、ガード専念する竜二に昨日覚えたいろんなコンボを試せ」
「わかったわ、ちょっと気が引けないけど」
ユズも若い女だけど、流石にレイナよりは見た目通り年上だ。
レイナって、見た目は小学生にしか見えないよな。
杏那は、昨日覚えたコンボを入れる。
しかし、攻撃モーションを熟知している竜二はガードしていた。
「これがスピンキックで……これがキャノンパンチ」
杏那がコマンドを入れて、ユズが技を繰り出す。
だいぶ、動きが格闘ゲームらしくなってきたな。
だけど、流石の竜二だ。店舗大会準優勝の実力を発揮し、レイナで鮮やかにガードしていた。
「今度はこっちのコンボ……」
だが、入れようとした瞬間タイムアップ。
結局、両者ノーダメージでライフが減らないので、両者に1ポイントが入っていた。
「なあ、俺はいつまでやればいい?」
「今日一日だ」
竜二が嫌そうに聞くが、俺は一日を強調していた。




