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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
三話:コンボ・コマンド
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学校が終わり、俺は道で自転車を押していた。隣には杏那もいた。

普通に六時間、ガッツリ授業。夏休み明け最初の授業は単純にハードだった。

明日から体育が追加される、噂だと明日の体育はサッカーらしい。


放課後の鐘が鳴り、杏那は直ぐに俺に向かいに来た。

その度に女子に変な噂をされて、憶測だけが俺の知らないところで進んでいるのかもしれないが。

自転車通学の俺と、徒歩通学の杏那は街の中を歩いていた。

九月に入ったとはいえ夏の暑さで、昼間の三時ぐらいはクソ暑い。

汗がダラダラと流れてきて、頭もボーっとすることもある。


「絶賛、残暑展開中だな」

「なによ!和成っ、シャキっとしなさいよ!」

「あまり杏那は汗、かかないのか?」

「あんたが汗をかきすぎなのよ」

俺の隣にいる杏那の表情は、驚く程涼しい表情を保っていた。

汗臭さもなく、むしろ俺の汗の匂いがきつい。


「それより、問題を出すんでしょ」

「ああ、『スピンキック』のコマンドは?」

「KK前」

「ああ、そうだ。この技は使えるから、牽制とかに使う。防御する方は中段、下段ガードで」

「次の問題出して」杏那が俺に、問題をさらに求めてきた。


「じゃあ……これは?『ユズコンビ』は?」

「PPKでしょ」

「そう、二発パンチしたあと、一発下段蹴り。この技も、ユズ使いなら覚える必要がある技だ」

「でも、威力は低いのよね、全部で35ダメージ」

「威力は低いけど、相手に攻撃されにくいんだ。

そもそもユズはスピードと手数勝負だから、いくつかコンビネーションを駆使して戦う」

「一番ダメージの大きい単発の技は?」

「『ユズシャッター』だ、ダメージ80」

ちなみにこのダメージは、技に設定されるダメージ値。

すべての技にダメージ値があるが、カウンターヒットや当たり方でもライフの減りが変わってくる。


「じゃあ、『ユズシャッター』のコマンド……」

「後ろとK長押し」

「よく覚えているな、すげーよ。一日でこれだけ覚えたのか」

「この技は、『ユズコンビ』二回分よりダメージあるでしょ」

「まあな。あくまで当たれば……の話だけど。

大会なんかで使っている奴は、見たことないし」

ダメージが高いこの『ユズシャッター』は、当然当たりにくい。

ダメージの高い技はモーションが遅いというのが一般論だ。これは他のキャラも同じだ。


「じゃあ、『ユズシャッター』を使いこなせば、大会を優勝できるんでしょ」

「だから使わないって、そういえば大会のことどれぐらい知っている?」

俺は技よりも杏那に、目的である大会の話をあえて聞いてみた。



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