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『カムチャット』、正しくはカムチャット・ミルロイ・プヤット。
出身国はタイ、戦いのスタイルはムエタイだ。
足技を得意としているトリッキーな動きが特徴。
昨日、祈里も何度か杏那と戦った時に使っていたな。
「カムチャットか、いろいろ調べたよな?」
「ユズのところで、カムチャットと相性が悪いって書いてあったから」
「なるほど、確かに相性は悪いだろうな」
「なんで?」純粋な目で、杏那は聞いてきた。
「カムチャットって、ムエタイだからな」
「そもそもムエタイって?」
「ああ、タイの国技。よくバラエティ番組の罰ゲームで、「タイキック」と言いながら上半身裸の奴いるだろ。
あれがムエタイの選手だ」
俺の説明に、やはり杏那はイマイチ理解できていない表情を見せた。
「まあ、ゲーム画面見れば分かるだろ。
それより、カムチャットとユズは相性が悪い理由だが、利き手が絡んでいるだろうな。
二人共左利きタイプだからというのが理由かな。
そしてキックボクシングはサウスポー同士で戦うと、ある程度攻撃が限定される……」
「カムチャットもサウスポーでしょ」
「確かにね、ただ手が左利きでも足も左利きだとは限らない。
それにムエタイのキックは、サウスポーだと避けにくいらしい」
「そうなのね」
「リアルファイターは、リアルを追求した3Dゲームだし。
ある程度のモーションは、リアルの格闘技に準じている。そういうデキのゲームだ。
その分、サウスポーは有利に働く。もちろん右利きの方が多いが」
「大体わかったわ」
「カムチャットの話は、また今度詳しく説明するよ。
それより、杏那は今日の夕方空いているか?」
「うん、今日は平気」杏那はスマホを見ながら、俺に答えた。
「だったら、今日もゲーセン行こうぜ。宿題の答え合わせもそこで」
「わかったわよ」
いつもどおり食い気味に杏那は、真剣な顔で俺に頷いていた。




