003
――八月、残暑の厳しいあの日。
夏休みの宿題をあらかた終わらせた俺は、ある場所に向かっていた。
学校のある方はだいぶ都会で、ビル街が見えた。
そして、俺はアスファルトのビル街を自転車に乗っていた。
(クソ暑いな)
緑色のシャツに短パン、道路のそばにある気温計は三十度を越えていた。
汗だくで、へばりながらペダルをこぐ。
だけど、このあたりは街のほぼ中心だ。コンビニや大きなデパートみたいなものも見えた。
逆を言えばアスファルトの熱が逃げずに、地面はクソ暑いわけだが。
(街の市街地だからそろそろだな、あそこは涼しいからな)
汗をかきながら、自転車のペダルを必死に回す。
体に脱力感があったが、目的地が大きく見えると俺の足は再び動く。
そして、俺の目的地にたどり着いた。
それは赤い建物、『ゲーム』というのぼりも上がっていた。
(やっとついたぜ、ゲーセン)
駐輪場に自転車を止めに行く。
建物の影があり、ガラス張りの自動ドアの奥にはUFOキャッチャーも見えていた。
自転車を止めたとき、俺は後ろの方から視線を感じた。
(ん、誰かいるのか?)
俺は、ちらりと道路側を見ていた。
なんだか、さっきの道路のあたりから視線のようなものを感じた。
だが道路は、アスファルトの照り返しの陽炎が邪魔をして遠くがよく見えない。
(まあ、何もないだろう)
すぐに、前に振り向いてゲーセンの中へと歩いて入った。
それは夏のいつもの日、いつもの日課だった。




