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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
二話:キャラ選び
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その日、俺の家のテレビは夜八時までリアルファイターだった。

父親もいなく、母親は家事をするから大体日曜は夜以外、来客がなければテレビはつけない。

俺の家の周りは、何軒かの住宅があるが基本田舎だ。

母親に言われたこともあり、杏那をバス停まで送っていくことになった。


夜道、杏那と俺は二人で歩く。

畑から夏の虫の鳴き声のようなものが聞こえた、田舎のあぜ道。

杏那の手には、来るときに持っていたデパートの紙袋があった。

そういえば、母親が杏那はお土産を持ってきていたって言っていたな。


「杏那、お疲れ」ねぎらう言葉を俺は、かけていた。

「全然勝てなかったわ」

「まあ、初心者だし」

「時間がないのよ」

杏那が、慌てるのは期限があるからだ。

杏那の父親が、初心者の杏那にあからさまにむちゃぶりをした。

今月末の県大会に出場して、父に勝つ。しかも初心者の杏那が、県大会に出る強さにならないといけない。


「あの子は、県大会に出たの?」

「祈里は昔の『リアルファイター6』の県大会に出たことあるけど、春は出ていないかな。

店舗大会で俺に負けて、受験生だから諦めたみたい」

「そう、でもあたしは全敗したのね」ため息混じりで、呟いた杏那。

自分が戦う世界が、いかにも難しいことを思い知らされたそんな顔をしていた。


「まあ、祈里はそれでも強いよ。

祈里に勝てれば、県大会には十分いけると思う。

ただ、秋の大会も受験生だから県大会には参加しないだろうけど」

「ゲーセンのも、強いの?」

「まあ強いよ。それに店舗だっていろいろあるし。

それより、選んだキャラのユズは気に入った?」

「ユズ……うん、可愛いわね。女の子っぽいっていうか、あんまり女の格闘家見たことないし」

「ゲームの世界だから……リアルだと、あちこち怪我するからアザとかあるしね」

ユズの顔を浮かべて、俺ははにかんでいた。


夜道を進み、バス停にたどり着く。

バス停で、時刻を確認する。スマホで時間を見ていた。


「あと十分か」

バス停のそばには、ボロボロだけど小さな小屋が見えた。

雨をしのげる屋根もあり、ポタポタと雫がたれていた。

そういえば、夕方雨が降っていたらしい。来る途中も、あぜ道に水たまりがいくつかあったな。


「ねえ、メアドを教えて」

「あ、ああ……そうだな」

そういえば俺は、当たり前だけど杏那のスマホの番号を知らない。

こうして杏那と一緒に俺は、メールアドレスを交換していた。



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