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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
二話:キャラ選び
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最後の一本、五番勝負の九戦目の決着がついた。祈里の勝利だ。

やはり実力がある祈里だし、チートのキャラ性能に勝てるわけがない。

俺もユズで善戦はしたが、パワーに押されて負けたのだ。


「ふー、やっぱサイクロプスはチートだろ」

「だね、封印する」

俺と祈里の間だと、『サイクロプス』はチート認定されていて基本使用禁止の暗黙のルールがあった。

そんな中、俺は勝利を喜ぶサイクロプスの画面を見ながら祈里に声をかけた。


「ずっと戦っていて、疲れないか?」

「まあ、全部勝っているし」

「五番勝負も二百戦以上とか、かなり疲れるよな」

「ううん、私は大丈夫だよ。それにその子も、まだ戦う気だし……」

「磯貝さんなっ!」

「うう、わかったわよ。磯貝さんで」

祈里が、俺のそばにいる杏那を見ていた。

その杏那は、攻略本を広げながら俺のシャツの裾を引っ張っていた。


「杏那……」

「あたしに変わってよ」杏那の闘士は、それでもまだ消えていない。

祈里と違って何十連敗、いや百連敗以上しているはずなのに。

それでも杏那を動かしているのは、強くなりたいその気持ちだけだ。

強くなって、家族を守る。父親のむちゃぶりも、彼女はそれを信じてそのかすかな光を目指して突き進む。

そんな彼女の本気の思いを受けて、コントローラーを手渡した。


「今度は絶対に勝つ!」杏那はキャラクター画面にして、迷わずに『ユズ』を選択した。

「じゃあ、私もあなたの気持ちを絶対に折ってあげる」

そう言いながら、祈里は久しぶりに『ユウト』を選択していた。

俺は祈里が、ユウトを選ぶ意味を知っていた。


「じゃあバトル開始よ。今度こそあたしが勝つのっ!」

「いいわ、相手になる」祈里が杏那の挑発を、冷静に受け止めた。

テレビ画面では、女同士のバトルが開始された。

そんな中、俺は前でゲームをしている杏那に声をかけていた。


「気をつけろ、祈里のメインキャラは『ユウト』だから」

「知っているわよ」

当然プレイヤースキルもあり、杏那の『ユズ』に対し祈里の『ユウト』が連続技で攻め込む。

スピードのある杏那は、いくつかの単発必殺技がユウトにダメージを与えるようになった。

それでも、祈里の『ユウト』は次々とコンボの手数で圧倒していく。

結局のところ、『ユウト』が五本連取で完勝した。


「やっぱ、ユウトは普通に強いな」対戦結果を見て、俺は言葉を漏らす。

祈里は得意げに笑いが、破れた杏那はいつも悔しそうな顔を見せた。


「あなた……磯貝さん、初心者だから素直にユウトを使えばいいんじゃない?」

そんな中、祈里が初めてアドバイスらしいことを杏那に言ってきた。

それを聞いた杏那は、険しい表情を見せた。


「嫌よ、あたしは絶対に変えないわよ。だからもう一度勝負しなさい!」

杏那はいくら負けても、それでも祈里に立ち向かうのだった。

その執念に、さすがの祈里も少し気味悪さを感じていた。



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