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戦いは白熱していた。一応サイクロプスとは何度も戦っていた。
それにユズだって、全く使ったことのないキャラではない。
俺のメインではないが、コンボの技も攻略本を見ないで大体出せるほど熟知していた。
無論、サイクロプスの攻撃もよくわかったのだが。
「この技、まだ『リアルファイター5』にあったよな。サイ1専用か」
画面では、俺のユズがほぼ圧倒的に倒された。
これでポイントは三対四、祈里のサイクロプスがやはり一歩リードだ。
「ロックブラストは、『リアルファイター6』にないですからね」
「ああ、しかもガードできないからよけないと体力ゴッソリ持っていくし。
技の出る早さも、ガード不能にしてはかなり早い」
サイクロプスが、何もないところからいきなり大きな岩をボーリングの玉のように転がす技。
距離を離すただのパンチを使い、ロックブラストだけでも初心者相手には十分通用するチートのような技。
ガードできないから横に避けるしか選択肢がない上に、入力でレバーを上や下に倒せば手前と奥にも変化をつけられるからタチが悪い。
「やっぱチートだな、サイクロプス」
「でも、近づかれたらユズの方が上でしょ」
「そうなんだけどね」サイクロプスの図体は、ユズの二倍あろうかという大きさ。
大きく太い腕でパンチと、大きな足でキック。
どちらも攻撃の当たり判定が、圧倒的に大きい。
またガードしても、女キックボクサーのユズなら後ろに吹き飛ばされた。
ダメージこそないが、牽制のパンチだけで距離を取られると近づけるはずもない。
「杏那、やっぱりユズでいいのか?」
「何が?」
「いや、キャラ……」
「そのキャラ、強いわね」
「サイクロプス?こいつは、リアルファイター6にいないから使えないよ」
「そうなんだ」杏那はちょっと残念そうな顔を見せた。
それでも、俺はなんとかサイクロプスの攻撃をかいくぐって連続技のコンボを入力した。
ダメージは低いが、最後は制限時間たっぷり使ってギリギリで俺のユズが勝利した。これで四対四。
攻略本を広げてみている杏那に、俺はちらりと見ていた。
「まあ、ユズは難しいからな」
「これだけ可愛いんだけどね」関係ないことをいう杏那。
「このページがユウト、あとはボクサーの『ジョニー』こいつも初心者向けだよ。
パワーもスピードも高いし、技の性能もいいから」
そう言いながら、俺は画面に集中する。再び、青い巨人の猛攻をしのいでいた。




