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ラスボスは、チート的な強さがあった。
通常使うことができないし、大会でも使用禁止になるほどのキャラ性能。
だけど、コマンドとして一応ゲーセンにあった時も同じコマンドで使える。
ちなみに『リアルファイター5』は『サイクロプス』で、『リアルファイター6』のラスボスとはまた違う。
「弱いわ、人間がゴミのよう」
祈里の『サイクロプス』が、予想通りに圧倒した。
五連続でポイントを奪い、鮮やかな逆転勝利。
大型の巨人のような大きさだが、攻撃のモーションも大きさに似合わず早い。
おまけに一つ技のダメージも高いので、ゴリ押ししても簡単に勝てるほどだ。
絶望する圧倒的強さに、杏那はじっと画面を見ていた。
「祈里……容赦ないな」
「容赦なくないわ、私は全力で常に戦うだけ」
なんだか、祈里がムキになっているようにも見えた。
杏那は呆然と、ただ画面を見ていた。
祈里のやり方だと、杏那の心を徹底的に折っているようだ。
「ごめんな」後ろから声をかけた。
だけど杏那は反応を示さないで、画面で繰り返されるリプレイを見ていた。
「祈里も謝れ、流石に初心者相手にサイクロプスはダメだろ」
「いいのよ。お兄ちゃんだって初めてやったときも、私に対してラスボス使ったでしょ」
祈里は、くだらないことは覚えているようだ。
確かにあの時は小学校で、子供だった俺はチートキャラの強さに魅せられていた。
隠しキャラ的なもので、秘密を知ってその強さで、ほぼ素人同然の祈里をボコボコにした。
だけど、それは小学校の話で今はそれでも相手を考えて戦うようになっていた。
「あの、和成……」画面を見ている杏那が、小さく絞るように喋ってきた。
「なんだ?」
「ユズで、どうやったら勝てるの?」
「ユズの性能を考えて戦う、キャラクターを理解しないとね」
「じゃあ、やってみせて」
そう言いながら、杏那は俺にコントローラーを渡してきた。




