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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
二話:キャラ選び
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プロレスラー、『デス・ストロング』。

『リアルファイター3』で、追加されたキャラクター。

覆面レスラーで、素性はわからない……ことになっている設定だ。


リアルファイター2の時には、正統派でベテランプロレスラー『太山』というキャラが追加された。

その太山が、女キックボクサー『北条 ユズ』という杏那の選んだキャラクターと異種格闘戦『リアルファイター』で戦った。

当時十四歳のユズに負けて、太山が引退して『デス・ストロング』として参戦した設定。

現在のプレースタイルは、完全にヒールレスラーということになった。

ユズに負けたことで、ユズにすごくライバル意識が強い。


「とまあ、こんなふうにデス・ストロングはユズのライバルなわけで……」

「なにそれ?」

「何ってゲームの設定、戦う前に特有の会話が出ているので……」

「いらないわよ、そんなの」

杏那は、キャラクターの設定に全く興味を示さない。

会話シーンを、スタートボタンでスキップした。

その説明は、確かにゲームが強くなるのには不要ではあるが。


「で、この子は?」

「『ユズ』な、攻撃のコンボは……これ」

俺はそう言いながらゲーム機の近くにある本棚から、一冊の大きな本を取りだした。


「これって?」

「攻略本だよ、ユズは……あった」

杏那の前で、B4サイズの攻略本のユズのページを開く。

そこには写真付きで、技の入力法が書いてあった。


「この技は、ゲーセンのやつと同じだから……覚えたことは無駄にならないだろうし」

「このPとかKは?」

「Pはパンチ、Kはキック。コントローラーだとAボタンがパンチで、Bボタンがキックで。

CボタンはGだから……わかるよな」

「ガードでしょ、あとP+Kは?」

「同時押し、言い忘れたがコントローラーのDボタンは禁止な」

「えっ、なんで?」

「家庭用ゲーム機は、便利ボタンと言ってボタンを設定できる。DはP+Gにしてある。つまり投げ技。

だけど、杏那はゲーセンで勝ちたいから禁止な。ゲーセンの筐体には、便利なボタンないし」

「そうね、わかったわ」

杏那は気づいていなかったようだ、俺や祈里が教えなかったのもあるが。


ちなみに杏那の家には、PF4のゲーム機はない。

PF3のゲーム機すらないので、家庭用ゲーム機を触るのも始めてだ。

俺と戦う時は、杏那のほぼボタンの練習場と化す。

攻略本のコンボを、杏那は一つ一つ試していた。


「だいぶわかったか?」

「うん」

「戻ったわ、お兄ちゃん」そんな折、祈里がトイレから出てきた。

そして俺が持っているコントローラーを、「よこせ」とばかりに手を伸ばしていた。



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