002
松本中央は、女子が多いことでも有名だ。
元は女子高だったらしく、最近男子を入れるようになったが圧倒的に女子が多い。
玄関では、噂の美少女磯貝が俺の手を引いていることで玄関にいる女子たちがヒソヒソ話だ。
それでも、俺は話したことのない女に全く興味がなかった。
最も異性より同性に、強い興味があるわけではないが。
「俺は、あんたに用がないけど……」
「あなたにはなくても、あたしにはあなたに用があるのよ!」
「おやおや、俺じゃないの?」
由人は再び、格好をつけるように髪をかきあげた。
磯貝にアピールするように、由人がかっこいいオーラを放つ。
「誰?この鬱陶しいのは」由人に対して、磯貝がバッサリ切り捨てた。
「由人だ、一応俺の親友でもある」
「そう、じゃあさっさと行くわよ!」
磯貝がそれでも、俺の学ランの袖を引っ張っていく。
無理やり引っ張ろうとして、俺の学ランが伸びていく。
「どこに行く気だ?強引な女に、興味ないし……」
「あの……さ」
おもわず磯貝が、俺の前で俯いていた。
なるほど、確かに俯いた姿は少し可愛い。女子好きで有名な由人の、言うとおりかわいらしい見た目だ。
だけど、俺にとってはそんなことよりもっと急ぎたいことがあった。
それでも、磯貝が振り返って俺の右手を両手で優しく包み込む。
「八月のあの日から、決めていました……」
小さく可愛い声で、言う磯貝。
その仕草は、確かに可愛い。恥じらいというか、しおらしいというか、愛おしく思わせてしまう。
そして、その仕草にまんまと騙されて俺は照れてしまう。
「決めていたって何を?」
「あたしを……弟子にしてください!」
「はい?」
磯貝は目を大きく見開いて、俺に訴えかけてきた。
その瞬間に、俺は頭の中である考えを巡らせていた。




