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季節はすっかり冬だ、厚手のジャンパーを俺は着込んでいた。
それでも、東京のこの場所は熱気で熱かった。
ここは東京の白い建物。それは『リアルファイター』全国大会の会場でもある聖地だ。
大会に集まっているのは、各都道府県を勝ち抜いた強者ばかり。
俺はそこの一室に入っていた。半年ぶりに帰っていた。
前室は、参加者全員四十人が使っているのでかなり広い。
試合開始に向けて、俺は二人の人間を招き入れていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
受験生の祈里が、激励に来ていた。
既に冬休みに入っている受験生だが、この日は激励のために来てくれた。
もこもこの白いガウンを着て、俺の前で攻略本を見ていた。
「しかし、強そうなやつらばっかりだな」もう一人は竜二だ。
なぜだかわからないが、髪を直して短い七三分けになっていた竜二。
「まあ、全国大会だからな」
だが不思議と緊張も、震えもない。
今の俺は、はっきりと戦う目的が出来ていた。
「ああ、ちゃんと勝たないと杏那や竜二に申し訳ないからな」
「あたりめぇだ、俺たちが最強であることを示して来い!」
「うん」俺は迷いがなかった。
決勝戦、リーグ戦を三連勝したのは俺だけだ。
県大会を連覇し、俺は再びここに来ているのだ。
去年とは違う、迷いがあって漠然と戦っていた俺ではない。
「参加者のみなさーん!そろそろ、袖入りしてくださーい」
関係者らしきスタッフが、声をかけてきた。




