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竜二とは何度も戦っている。シングルでも大会でも。互いを知り尽くした相手だ。
そして、激しくしのぎを削っていた。
俺の隣には、竜二が無言で座っていた。
「さあ決勝か。そして……」
「やっとだぜ、待ちくたびれた」
竜二は、獲物を狙う狼のような目を見せていた。
俺と竜二の戦いということで、ギャラリーも盛り上がっていた。
そして、俺と竜二はいつも通りのキャラを選ぶ。俺はもちろん『ファン・ジャンチー』だ。
「和成、まだ師匠兼任か?」
「師匠は、俺のプレイヤースキルを上げるためでもある」
「何を言う?弟子にかまけて、自分のプレーが疎かになっているんじゃないか?」
「それは違うな」
一度、竜二のカムチャットに負けている。それ以来の戦いになるのだが。
すぐに始まった、早速カムチャットが攻めて来るのが分かった。
互いに、後輩にゲームを教えていた。店舗大会までは、教える方がメインだった。
教えながら二人で戦う、そういうスタンスで進んできた。
「俺は、強いぜ。歩美と別れてから、猛練習をした」
「竜二は、やはり手馴れている」
カムチャットの華麗なコンビネーションで、最初の試合をとった。
「いや、お前の動きは衰えている。練習が全てだ」
「それは違う!竜二、俺は杏那を教えることで新しいステージにたどり着いた」
「何を言っている?プレーに迫力がない」
さらに、竜二の操るカムチャットがファン・ジャンチーを倒した。
二ポイント、三ポイントと連取する竜二。
「前回の店舗大会は、和成が圧倒していたぞ。やはり時代は終わったな」
「そうだろうか?」
「負け惜しみを」
だが、竜二の動きが止まった。俺のファン・ジャンチーの動きが、今までより変化していた。
「なんだ、この動き……まさか」
「そう、お前はずっと俺の餌に引っかかっていた」
俺の二択コンボが、カムチャットの動きを乱す。
ファン・ジャンチーには、もともと二択コンボがあった。だが、なかなか使えなかった。
そもそも技のモーションが遅く、使いにくい。倒れた状態から出す技なので、状況がそろうのが難しい。
「こいつは杏那のユズと同じ、二択コンボを使いながら的を絞らせない攻撃をする」
「くそっ、小賢しいな!」
「一度はまれば、簡単に見破れないさ」
竜二のガードが乱れ、カムチャットは倒れていく。
その後、俺はあっさりと四ポイントを奪い返した。
「くそっ、こんなはずでは……」
最後は、ファン・ジャンチーがカムチャットから五度目ダウンを奪っていた。




