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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
十二話:県大会
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竜二とは何度も戦っている。シングルでも大会でも。互いを知り尽くした相手だ。

そして、激しくしのぎを削っていた。

俺の隣には、竜二が無言で座っていた。


「さあ決勝か。そして……」

「やっとだぜ、待ちくたびれた」

竜二は、獲物を狙う狼のような目を見せていた。

俺と竜二の戦いということで、ギャラリーも盛り上がっていた。

そして、俺と竜二はいつも通りのキャラを選ぶ。俺はもちろん『ファン・ジャンチー』だ。


「和成、まだ師匠兼任か?」

「師匠は、俺のプレイヤースキルを上げるためでもある」

「何を言う?弟子にかまけて、自分のプレーが疎かになっているんじゃないか?」

「それは違うな」

一度、竜二のカムチャットに負けている。それ以来の戦いになるのだが。


すぐに始まった、早速カムチャットが攻めて来るのが分かった。

互いに、後輩にゲームを教えていた。店舗大会までは、教える方がメインだった。

教えながら二人で戦う、そういうスタンスで進んできた。


「俺は、強いぜ。歩美と別れてから、猛練習をした」

「竜二は、やはり手馴れている」

カムチャットの華麗なコンビネーションで、最初の試合をとった。


「いや、お前の動きは衰えている。練習が全てだ」

「それは違う!竜二、俺は杏那を教えることで新しいステージにたどり着いた」

「何を言っている?プレーに迫力がない」

さらに、竜二の操るカムチャットがファン・ジャンチーを倒した。

二ポイント、三ポイントと連取する竜二。


「前回の店舗大会は、和成が圧倒していたぞ。やはり時代は終わったな」

「そうだろうか?」

「負け惜しみを」

だが、竜二の動きが止まった。俺のファン・ジャンチーの動きが、今までより変化していた。


「なんだ、この動き……まさか」

「そう、お前はずっと俺の餌に引っかかっていた」

俺の二択コンボが、カムチャットの動きを乱す。

ファン・ジャンチーには、もともと二択コンボがあった。だが、なかなか使えなかった。

そもそも技のモーションが遅く、使いにくい。倒れた状態から出す技なので、状況がそろうのが難しい。


「こいつは杏那のユズと同じ、二択コンボを使いながら的を絞らせない攻撃をする」

「くそっ、小賢しいな!」

「一度はまれば、簡単に見破れないさ」

竜二のガードが乱れ、カムチャットは倒れていく。

その後、俺はあっさりと四ポイントを奪い返した。


「くそっ、こんなはずでは……」

最後は、ファン・ジャンチーがカムチャットから五度目ダウンを奪っていた。



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