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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
十二話:県大会
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運命の日がやってきた。

そして、運命の場所にやってきた。

長野市内あるこのゲームセンターは、松本市内のゲーセンよりさらに大きい。

外観はやはり赤く、三階建ての高い建物で県大会会場は三階であるのだ。そして、人が集まっていた。


「すごい、大きなゲーセン」

杏那は、黒いノースリーブと白のミニスカート。


「ああ、大きなゲーセンだ」

「お前は見たことあるだろ」

ビデオゲームエリアで、俺はゲーセンの中を見ていた。

俺は長袖のシャツに、長ズボン。流石に秋なので寒い。

冬服を出そうかと、わざわざ思ったぐらいだ。


そんな中、人だかりができているエリアがあった。

乱入台があるところだが、そこには人がかなり多く集まっていた。

大多数が男というのは、『リアルファイター』というゲームの性質上どの大会も変わらない。

多くの人が集まるそんな中で、見慣れた一人の人間がやって来た。

背広の営業マン、優しそうな顔でニコニコしながらこちらに現れた。


「あれ、御厨殿ではないですか」

「ああ、謙信さんも来ていたんですか」

「ええ、塩尻の予選はなんとか勝ちましたので。やはりきましたね、磯貝さん」

「もちろんよ、今度もあたしが勝つわ」

気合の入った杏那は、にこやかな謙信を厳しく睨む。

目を細めた謙信は、優しそうな顔をしているが本番になると強気の性格だ。


「それじゃあ、私はこれで。また御厨殿」

謙信は、仲が良さそうな社会人のグループの方に消えていった。


「あれ、謙信か?」

「ああ、塩尻の魔術師の」

「そうかよ、やべえな、サインもらってくるか?」

「やめておけ、仮にも対戦相手だぞ」

竜二は、意外にも謙信とは初顔合わせだ。

ネットでも有名なプレイヤーだから、謙信の隠れファンも多い。


「にしても、人が多いな」

「ここの予選も今やっている。まだ終わっていなそうだな」

「そうだね。どうした杏那?」

俺と竜二が話している間に、杏那が動き出す。


「パパっ!」

「パパ?」

杏那が進んだ先には、背広を着た男が一人いた。

ねずみ色の背広に、残念に禿げた頭。

年齢的には五十代の初老の男、口には髭も生えていた。


「杏那……どうして」

そしてその男も、杏那の登場で驚いた顔を見せていた。



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