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翌日のゲーセンにも、俺と杏那は来ていた。
土曜日は、午前中で学校が終わるからだ。
いつもどおり昼を学校で食べて、制服のままゲーセンに向かう。
ゲーセンの中には、竜二の優勝の写真が貼られていた。
トーナメントの結果も張り出されていて、応援ムードが見えていた。
そして、ゲーセンの乱入台でそのチャンピオンがゲームをしていた。
「やっぱりいたか、『ドラツー』」
「俺のプレイヤー名で言うな、和成」
喋りながらもラスボス、サイクロプス・改をしっかり倒す。
そのままエンドロールをショートカットして、立ち上がった。
古風な不良の竜二だ、相変わらずの姿だ。
「なんだ、磯貝も来ていたのか?塩尻で優勝したのは、本当だったのか?」
「当たり前でしょ、今度こそ倒すから首を洗って待っていなさい!」
「ほう、面白い。できればいいがな」
竜二は余裕を見せ、杏那は宣戦布告だ。二人の間に、既に火花が散っていた。
「にしても、和成。お前は、県大会シードだったとはな」
「俺は一応、全国行っているぜ」
「初戦敗退だろ!」
「うるせー!今度は勝つ」
「威勢はいいな。だが今回は、俺もかなりパワーアップしているぜ。
お前は、弟子の育成であまり練習していないようだが?」
「ところが、そうでもないんだな。これが」
余裕を見せて俺は、軽く笑ってみせた。
「えらい自信だな、和成」
「俺の自信は、必ず根拠がある」
「楽しみだ、決勝トーナメントで待っているぞ」
竜二は最後にかっこつけて、肩をいからせて歩こうとしたが、反対側から猛スピードでやってきた女がいた。
その女が現れて、竜二は足を止めた。
「ちょっと、ちょっと待ちなさい!」
そこに出てきたのは、制服姿の歩美。走ってきたロングカールの女。
呼吸を乱し、竜二の前に立ち止まった。
「歩美じゃねえか?なんだ?」
「竜二、歩美に地区大会優勝の証明証を売りなさい!金はいくらでも出すわ!」
「はあ、どうしてだ?」
「歩美は、今度こそそこのあんこ餅にリベンジするのよ!」
歩美が杏那を指差して、すごく睨んでいた。
負けず嫌いの杏那も腕を組んで、鼻で笑う。
「あんた、そんなにしてまで県大会に出たいの?」
「そうよ、出たいわ。って、竜二待ちなさいっ!」
歩美を無視して、竜二がゲーセンの出口の方に歩いていく。
顔を赤くして歩美は、竜二を走って追いかけていった。
「ねえ、あれって……」
「仲がいいよな、あの二人」などと俺は、適当に言っていた。




