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俺が好きになったこのゲームを、いつの間にか杏那は好きになっていた。
きっかけは不順で、手段のようなゲームだったかもしれない。
それは単純に仲間が増えること。杏那は『リアルファイター6』をやっていた。
杏那は乱入台でゲームをしていた。いつもどおりのユズを使う。
(本当に、強くなったな)
俺は杏那のゲームをただ、後ろで見ていた。
さっき、杏那が俺にゲームを「やらせてくれ」と直訴した。
俺はそれを拒む理由はない。杏那はすぐに乱入をしていた。
顔は見えないが、相手が使うのは『ジョニー』。そして歩美によく似た待ちジョニー。
だけど、今の杏那の敵ではない。
最初こそ、カウンターが決まっていたが、次第に杏那の攻撃が決まるようになる。
そして、逆転でユズが勝利を収めていた。
「やったな、杏那」
「待ちジョニーは、これで全然怖くないわよ」
「俺も初めた頃は、このジョニーの神性能にだいぶ苦しめられたけど」
「あれって、最初からあるの?『メガトンパンチ』」
「うん、最初はもっと判定がえぐかった。
ダメージも高かったし、みんな待ちジョニーだったよ」
「あれよりダメージ高いの?」杏那は驚いた顔を見せた。
そんな杏那に対し、いつの間にか乱入はないようだ。
プレイヤーカードこそないが、杏那のプレイヤースキルでだいぶ警戒されていたのだ。
「そういうこと」
「ねえ、入ってこなくなったけど……」
「ああ……最近では、杏那のユズに警戒する人もでてきたようだな」
「なによ、弱い時にはすぐに入ってきたくせに!」
「それだけ、杏那が強くなったってことだ。そうだ、俺が入ってやろうか?」
「えっ、いいわよ。どうせ手を抜くんでしょ?」
杏那はそう言いながらもステージ7のアンソニーを倒していた。
ほぼパーフェクトだ。動きもかなり早い。
「いや、入ってやるよ。これを使うし」そう言いながら、杏那に俺はプレイヤーカードを見せていた。
そして、俺は杏那のいる乱入台に向かった。




