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ゲーセンで、ビデオゲームを全くやらないのは久しぶりだ。
子供の頃、お小遣いが少なくてゲームをやらないで他人のプレーを見ていた頃を思い出す。
いや、杏那の練習に付き合うようになってから、ゲームをやらない日も随分増えたよな。
まあ、他人のプレーを見ても自分の練習になるからな。
そんな中、パンチングマシーンに来ていた。
「いやあ、すごいな、杏那」
「な、なによ!そんなに、たいしたことないわ」
「193キロ……由人より上だし……」
パンチングマシーンで、由人の記録を軽々と超える女。
流石に由人が褒めて倒すほどの、素晴らしい身体能力の持ち主だ。
パンチングマシーンから、近くのベンチに座っていた。
ここからは、ちょうどメダルゲームとビデオゲームが見える場所だ。
無論、『リアルファイター6』の乱入台も見えていた。
今日は、プレミアムフライデーということで人も多い。
子供だけではなく、大人の会社員も多いようだ。
「気になるのか?」
大きなぬいぐるみを抱いたまま、杏那は『リアルファイター6』をじっと見ていた。
俺はそんな、杏那の真剣な横顔を見ていた。
「別に……遊ぶんでしょ」
「ああ、遊ぶ。リフレッシュは大事だ」
「あのさ……和成」
「なんだい?」
「リアルファイターで、一番好きなキャラは?」
「うーん、唐突に……『レイナ』かな?」
俺が名前を挙げたのは幼女の魔法少女、レイナだ。
ツインテールの可愛い女の子で、ゲームのデモ画面でよく出てくるキャラクター。
「やっぱりロリコンね」軽蔑の目を送る杏那。
「いや、そうじゃなくてなんというか、可愛らしいのもあるけど……」
「だからこういうこともするのね」
スマホを取り出した杏那は、前に見せた俺のプレー画面を見せてきた。
『レイナ』のスカートの下を見せるような、エロプレーの数々だ。
「あれはその……頼む、消してくれ」手を合わせて懇願する俺。
「どうしようかしら?友達の新聞部にでも、売ろうかしら?」
「それだけは、やめてくれっ!」
俺は杏那のスマホを奪おうとするが、杏那に手が早くて届かない。
「でも、そんなに好きなの?見た目じゃないの?」
「ほら、レイナってバカ正直に頑張るっていうか、素直っていうか。
世界の平和のために戦う、シンプルな言葉だけどそれは凄く重い言葉だと思う」
「どうして?」
「戦うんだよ、痛い思いをするかも知れない。怖い思いをするかもしれない。
しかもあの年齢で、あの若さで、あんな小さな体で。
迷わないでレイナは戦う、まっすぐ世界平和を見ていて、戦いを諦めない。だから単純に好きだ。
まっすぐで頑張っている子は、単純に好感が持てるから」
「そう……和成らしいわね」
杏那もまた、俺の言葉を理解したということにしよう。
それでもスマホ画面を、ジーッと見ていたが。
「それにしては、このエロ行動は頂けないわね」
「あっ、だからそれは……」
「消してあげるわ、ただし……」
そう言いながら、杏那は俺に一つの提案をしてきた。




