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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
十一話:悩みもがく者
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あれから三日後、杏那はいつもどおりに戻った。

二日後の日曜日は、県大会だ。

一昨日、昨日とバイトがあったので杏那は、久しぶりのゲーセンになった。

だが、俺はゲーセンであることをしていた。


「杏那、ちゃんと攻略本を呼んでいるよな」

「うん」一度、保健教師に奪われた攻略本。頭を下げて取り返した攻略本。

来月には『リアルファイター6』のオフィシャルガイドブックが発売予定だ。

格ゲーの攻略本は、割と発売から時間がかかるものだ。


「でも、和成」

「なんだ?」

「なんでここなの?」

「今日、メールしたよな」

「それはしたけど……『今日一日遊ぶ』というのは本気なの?」

「約束通りプリ機でも取ろうか。塩尻の時には取れなかったし」

そうだ、塩尻のゲーセンで試合前に約束をしていた。

塩尻のゲーセンで優勝したのだけど、その塩尻のプリ機が運悪く故障していた。


だから、プリクラをとっていなかったのだ。

俺の前では、女子高生がひと組並んでいて、ちょうど入れ替わるようにプリ機から出てきた。

そして、列が進む。俺らの後ろにも女子の二組が並んでいた。

プリ機は女性の顔がドアップで、カーテンがかかっていた。


「杏那はこれがいいって言ったけど……なんでだ?」

「変顔が取れるから」

「変顔ねえ」

「後はメイクとかもできるし」

「ふーん、そういうものか」

ほぼ毎日、ゲーセンでいつも見ていたがあまり興味がなかったので気づかなかったのだろう。


「和成は初めて?」

「祈里と一回とったことあるけど、中学ぐらいかな」

「祈里ちゃんと、そうね」

「な、なんだよ。兄妹だし、いいだろ!」

「別に……いいけど」

喋っておいてなんか、残念そうな顔を見せていた杏那。


「杏那は、あるのか?」

「何度もあるわ……ただ男と撮るのは、今日が初めてだけど」

「そっか……」

それきりしばらく沈黙していた、俺と杏那。

そんな中でも、杏那は聞いてきた。


「でも、本当に『リアルファイター』をやらなくていいの?」

「ああ、今日は素直にゲーセンを楽しもうと思って。

昨日、一昨日も、バイトある中で『リアルファイター』ばっかりしただろ」

「うん、そうよね」

「それにな……プレッシャーになっているなら、一度違うことを」

「あっ、前が空いたわ。次っ、行こっ!」

杏那は嬉しそうな顔で、俺の手を引っ張った。

そして、俺と杏那はプリクラを撮り始めた。



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