表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
十一話:悩みもがく者
130/152

130

夕方、結局あのあとゲーセンを出た。

このあたりは、市街地から離れた場所で、畑も見えるのどかな場所。

祈里も自転車でここに来たので、ツーリングをしていた。

滅多に車が通らない道路なので、俺と祈里は道路の半分に広がって走っていた。


「お兄ちゃん、今日は一人だ」

「ああ、今日もだよ」

「そうなんだ」

「なんだよ?」

「いや、元気ないなって」

俺の顔を覗き込んだ祈里が、心配した表情を見せた。


「だ、大丈夫だ。それより祈里はどうした?」

「今日は塾を抜けてサボり」可愛く笑ってごまかす祈里。

「サボりって……」俺が苦笑いをしていた。


「でも、磯貝さんと喧嘩した?」

「いや、喧嘩は特にしていないんだが……一昨日の塩尻のゲーセンで優勝してから」

「優勝……か。お兄ちゃん、捨てられたんじゃない」

「やっぱり……」

「なーんてね、ウソよ。そういえば磯貝さんは、塾からここに来るとき見たけど」

「え?」いきなり祈里は、驚きの新事実を告げてきた。


「どこで?誰と、いつ?」

「えっと、駅近くの小さな公園で……一人だった。見たのはゲーセンに来る前だから、一時間前くらい?」

「なにしていた?」

「ブランコに乗っていたような……そういえば元気がなかったような」

祈里が思い出しながら、口にした。


「ありがと、祈里」

すると俺は、自転車を止めた。


「お兄ちゃん、待って!」

「いや、いく」

「どうして?あの子に捨てられたかも、しれないんだよ」

「それでも理由が知りたい。この二日、満足に話せていないから」

俺はUターンをしていた。そのまま、必死な顔で自転車をこぎ始めた。


「お兄ちゃん、だから一時間前だって!」

「じゃあな、祈里」

決して振り返らず、俺は激しくペダルを回し始めた。

顔を歪めながら、ひたすらこいでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ