表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
十一話:悩みもがく者
127/152

127

昼休み、俺はご飯をいつものテラスで食べていた。

今日も、杏那はいない。女子たちと一緒にいるのだろうか。

その代わりに、俺の相手は別の男がいた。当然のごとく、由人だが。


「和成は、ここで食っていたのか」

「まあ、中庭も見られるし」

「磯貝さんと一緒に……だろ」

由人はなんでもお見通しだ、特に女のことは本当に詳しい。

由人の昼食は、いつも購買で売っているゼリーだ。

空手の大会が近いと、プロテインゼリーだけしか食べない。


「まあ、昨日も今日もいないけど」

「喧嘩しただろ」

「喧嘩なんかしていないわ」

そう言いながら、杏那が先週の土曜日ぶりにこのテラスに現れた。


「杏那、飯か?」

「うん、いいでしょ」

そう言いながら、杏那は俺と由人の間に座っていた。


「磯貝さん、もしかして俺のことが気になった?」

「いいえ、違うわ」由人を否定した杏那。

静かに弁当を広げる、やはりノリしかない寂しい弁当だ。

それを、黙々と静かに食べていた。


「大体、弱い男に興味はないわ」

「うっ……そうか」

苦笑いをする由人、実はこの前の道場で由人は杏那と組手をやった。

しかし杏那の身体能力の高さによって、由人が杏那の突きで悶絶した。

黒帯の由人が簡単に倒されて、俺も驚いたのだが。


「杏那は、本当に身体的なポテンシャル高いよな」

「あんたたちが弱いだけよ」

体力はないが、力は高い女。

運動部に入っていないのに、体力測定は女子よりも男子クラスだ。

対する俺は運動神経も女子並みなので、杏那の運動神経が羨ましい限りだ。


「それじゃあ、なんで俺にそっけないんだ?」

「そ、それは……」顔が赤い杏那。

弁当を食べる、杏那の動きが止まっていた。


「と、とにかく今日も練習行くから。後はゲーセンで、合流しましょ!」

「え?ああ」

杏那は、そう言いながら弁当を持ったまま立ち上がった。

そのままテラスのベンチから、いそいそと離れていった。

まるで、俺から逃げるかのように。

落ち込む由人と、呆気にとられる俺だけがそこに残っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ