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塩尻のゲーセンは前回来たのは二年前。
中学三年の時に受験生だったとき、学校見学の一環で塩尻に来ていた。
その日の帰りで、ここのゲーセンを見つけた。最もネットで調べてここに来たわけだが。
『ゲーセンクラブ塩尻』、松本のゲーセンとは同一系統の会社。
建物は赤いけど、大きさは小さい。中に入るとよくわかった。
「UFOキャッチャーも少ないし、プリ機は一台だけなのね」
「うん、珍しいだろ。ついでにビデオゲームの筐体も六台しかない」
俺と杏那が、ゲーセンの中を一緒に歩く。
杏那は初めてらしく、キョロキョロと見回していた。
「ねえ、記念にプリクラ取らない?」
それはおそらく、結構古い機種と思われたプリクラ。
やはり杏那も女だ。女子だから、こういうのが好きだよな。
「いや、お金使ったし無駄はやめとく」
「無駄じゃないし、記念だし……」
俺の陰に隠れて杏那が、なんだかブツブツ言っていた。
「じゃあ、和成!」
「どうした?」
「もしあたしが優勝したら、プリクラ撮って」
しつこい杏那、俺は頭をかいてプリクラを見ていた。
「わかった、時間があったらな」
「ホント、ありがと」
「ただ、そう簡単に優勝はできないぞ。御厨殿」
そう言いながら俺の前に、一人の男が現れた。
それは背が高く、ねずみ色のスーツを着た大人の男性。
「ああ、謙信さん。お久しぶり」
「御厨殿、お久しぶりです。前回の県大会以来ですね」
そのねずみ色のスーツの男は、俺の前に頭をペコペコと下げていた。
「ちょっと、何をしているの?」杏那が、俺のそばでヒソヒソと聞いてきた。
「ああ、この人は『皆川 謙信』。塩尻の店舗大会、前回の優勝者だ」
「お初にお目にかかります、『皆川 謙信』です。車販売の営業をしております」
目を細めて、杏那に謙信は頭を下げてきた。そして、名刺をすかさず渡していた。




