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時間は夕方から夜になった。ゲーセンと道路を挟んで反対側のファーストフードに、俺たちは入っていた。
夕方のファーストフードは混み合っていたが、二階は空いていたのでそこに席をとった。
そういえばここのファーストフード行くの、久しぶりだな。
窓側の席に座ったので、窓からさっきまでいたゲーセンが見えていた。
ライトアップされていて、なかなか綺麗だ。
「ここで、戦っていたのね」俺はハンバーガーセットを頼む。
「ああ、戦っていた」杏那は俺の隣で、シェイクしか頼んでいない。
「そして、俺が優勝した」俺の前にいるのは竜二。
ナゲットとコーラを頼んで、優勝トロフィーも持っていた。
「てか、反則じゃない」ふてくされた顔の杏那。
「何を言っている?あの手しかなかった」ナゲットを口に入れる竜二。
「すぐ組みついてくるし、攻撃が全然できない」
「それが、竜二のカムチャットの戦い方だからな」
いやらしいまでの首相撲。速い攻撃をする『ユズ』ならカウンター気味に首相撲で、攻撃を封じてきた。
やはり攻めしかない杏那にとって、攻めそのものを封じられたら厳しい。
経験に勝る竜二の、貫禄の作戦勝ちだった。
「それでも俺が、まさかお前に三ポイント取られるとは……な」
「負けは負けよ」険しい表情で、シェイクを飲んでいた杏那。
「それより、歩美は?」
「ああ、歩美なら師弟関係解消だそうだ。
あくまで今日の店舗大会のみに絞っていたから、これが終わったら勝っても負けても終わりだそうだ」
「そうか、杏那を目の敵にしていたからな」
「だが、歩美は諦め悪そうだぜ」
竜二の言葉に、俺は首をひねっていた。
「諦め悪い?」
「あくまで俺のペアを解消しただけで、『リアルファイター』を辞めるって言っていなかった。
おそらく、磯貝が戦えばまた歩美も戦うだろう」
「そうか……」
歩美がこのゲームをやめないことは、なんとなく嬉しかった。
もともと少しの間続けていたようだから、再び細々とでも続けてくれるのは嬉しい。
「まあ歩美が何度かかってこようが、あたしが叩き伏せてやるけどね」
「杏那も、相変わらずだな」
ん、杏那は「歩美」って言っていないか。気のせいだろうか。
「それにしてもだ」俺の前にいる竜二は、険しい顔を見せた。
「どうした、竜二?」
「なんで参加しなかった?」
竜二は俺に対して、俺が参加しなかったことをやっぱり怒っていた。




