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(KAZUNARI`S EYES)
土曜日の朝は、涼しい。
夏の暑さもひと段落して、自転車をこいでも汗はほとんどかかない。
自転車通学の俺は、カバンを自転車のカゴに入れて走っていた。
周りには制服を着た生徒たちが、静かなビル群を歩いていた。
(今日は、いよいよか)
二十二日十五時。この日は午前中で授業が終わり、午後から大会がある日だ。
午前で学校は終わるけど、俺は母親に弁当を作ってもらった。
年に二度、春と秋に『リアルファイター』の大会があるのだ。
6のナンバリングでは、三度目の大会ということだ。
俺が初めに参加したのは、中学入ってからだ。
もちろん最初の大会は、初戦敗退だった。
あれから悔しくて、いろいろ研究して俺は強くなった。
(今回は、出ないよな)
通算九大会連続で、あのゲーセンの店舗大会に出てきた。
優勝三回で前回王者の俺が出ないのは、初めての経験だ。
竜二にも負けたし、なにより今日は杏那のセコンドになる。
(やっぱり、俺もエントリーすればよかったかな?)
エントリーは、前日までにエントリーが可能。
当日はキャンセル待ちで、参加ができるようになっているがそれはあえてしない。
興奮を抑えることで必死だ。
(まあ、いいけどよ。とりあえず杏那の様子を見るか)
そんな妙な感情の中、俺は自転車で学校に向かう。通学路の前方の方に、人だかりができた。
学校までの一本道、女子生徒が五人ほど群れをなして立ち止まっていた。
(何かあったのか?)俺は、ちらりと自転車で通り過ぎようとした。
だが、木影には一人の少女が街路樹にもたれかかれて座っていた。
俺はその女の顔を見て、急に自転車を止めた。
「杏那っ!」
そこには、やはり顔が真っ白の杏那が制服姿でぐったりしていた。




