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次にあたしの視界に入ってきたのが、薄暗い部屋。
学校のジャージ姿で、布団の上にあたしは眠っていた。
四畳半の狭い部屋に、布団を二枚敷いたらほとんどスペースがない。
和室の部屋には、朝日も差し込んでこない。薄暗い部屋。
隣には布団が置かれているが、誰もいない。
(なんだ、夢か)
隣をちらりと見るが、母親はまだ帰っていない。
あたしが敷いた布団に、いるはずの母はいなかった。
体を起こすと、自分の布団を畳んでいた。
(パパ……)部屋の片隅に追いやられた小さな机……というか台があった。
そこにはあたしが小学生低学年の時にとった家族の写真。ディズニーランドに行ったときの写真だ。
写真の中の両親が仲良くしていて、楽しかったことも覚えていた。
現在ママは、深夜のバイトをしていた。
この家は、パパがいなくなってバラバラになった。
きっかけはママの浮気だった。パパはゲーム会社に働いていて、夜も遅いのも原因の一つだが。
そんな寂しいママは、浮気をしていた。
よくママが、知らないおじさんを連れていたからだ。
だけど、後でわかったのだけどママは騙されていただけだった。
融資の話や、いろんな話でお金を大量に奪い取られてしまう。
そして借金が回らなくなり、パパの耳にも入るようになっていた。
パパはあちこち声をかけて、親戚等に金を借りて借金をなんとか完済した。
当然、パパは許さなかった。
(別居。高校一年、ゴールデンウィークの出来事だ。パパはこの家から出て行った。
一応、あたしが高校生であるうちは離婚をしないつもりだったらしい。
それでもパパは、ママと喧嘩してこの家を出て行った。
今、長野市内にある会社の寮に住んでいることが分かっていた。
パパはあたしの学費だけは出してくれるが、離婚の気持ちは揺るがないようだ)
あたしは、直ぐに台所に向かう。
この台所も、一人しか立てないほどの狭い場所。
コンロが一つだけで、鉄の部分も少し錆びていた。
(あたしが高校を終わった瞬間、離婚する二人。それは絶対にダメ)
狭い台所で、大きな冷蔵庫を覗く。
家を差し押さえになって、いくつかの家電を買い戻した。
だけど、まだあたしたち一家の借金は続いていたのだ。
(今日の大会に優勝して、県大会に行く。パパとの約束は守る)
あたしは心に決めて冷蔵庫のそばにある、カレンダーを見ていた。
そのカレンダーには、今日二十二日のところに赤く丸印がされていた。




