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(ANNA`S EYES)
そこは、なにもない無機質なコンクリートの地面。周りは夜なのか闇で、ほとんど見えない。
そして、周りには人が集まっていた。
野次馬だろうか、何を言っているかわからないが声が聞こえる。
そして、あたしは姿が変わっていた。
赤いグローブに、赤いすね当て、ピンクのミニパンツに、タンクトップ。
へそが出ていたこの格好は、『リアルファイター』のユズと同じ格好だ。
しかし、その顔はあたしの顔。
「どうなっているの?」
「あら、まだ生きていたのね。あんこ餅」
あたしの前には上半身裸、男の筋肉質の体。青いボクサーパンツに、足にバンテージを巻いた人間。
手に青いボクシンググローブを付けたその人間は、『リアルファイター』のジョニーの立ち姿だ。
ただ、首から上はジョニーではない。髪もロングカールで女だ。
「歩美っ、なんでここに?」
「あなたを倒しに来た、そのまま倒れなさいっ!」
顔が歩美のジョニーが、あたしの方にパンチを繰り出す。
素早いパンチを打ち込んで、あたしのユズの胸や腹に命中していく。
「痛いわね」顔を歪めて、歩美の顔を睨む。
あたしも、負けじとキックからパンチを繰り出した。
歩美にヒットすると、歩美も後ろに下がっていく。
「くっ、やりますわね」
「あなたに、負けるわけには行かないのよ!」
「いいえ、勝つのはこの歩美ですわ!」
あたしがパンチを打ち込んだが、歩美は口元に笑みを浮かべては屈んでいた。
「しまっ……」
「これで終わりよっ!」
「いやああっっっ!」
屈んだ歩美が放ってきた、最後の『キャノンパンチ』がカウンターで決まった。
あたしの体が、宙に舞ってそのまま地面に大の字に倒れた。
呼吸を激しく乱し、天井を見上げていた。
「な、なんで……」あたしの体が、脱力感で動かない。
「あなたは、絶対あたしに勝てない。行きましょう、和成」
「えっ、和成……」歩美の隣には、制服を着た和成がいた。
ちらりとあたしの顔を見たが、直ぐに歩美の腰に手を回す。
和成が無言で、歩美と和成はあたしから離れていった。
「やめて、和成っ!」あたしは手を伸ばして、起き上がろうと上半身を上げたのだが……




