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バイトがある日は、時間が足りない。
今日、杏那が使ったのは二百円だけだ。
そしていつもどおり夜道を俺と杏那が帰っていた。
秋になって、半袖の学生服は寒く感じていた。
「でも十時までは、本当にあっという間よね」
「制服着ているから、しっかりバレるだろうし。コンボの練習は、ちゃんとできたか?」
「ううん」本人は納得していないようだ。
まだコンボのミスがあり、杏那の精度は低い。
こうしている間も、歩美は猛特訓をしているのだろうか。
「明日は金曜だし、バイトないから」
「そうだな、明日はギリギリまでやろう。
五百円以上は、前日だし明日だけ特別に解禁するか」
「さすが、和成っ!話がわかるじゃない!」
「でも、やっぱり無理しない程度に」
「大丈夫よ、あたしはへい……」だがそんな時杏那の足が、もつれていた。
フラフラした杏那の不安定な体が、うっかり車道側に流れていく。
「おい、大丈夫か?」
俺はふらついた杏那の手を、思いっきり引っ張った。
車道側に倒れそうな杏那を、なんとか引き寄せていた。
だが、その時の杏那の顔色は不健康に白かった。




