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5.冒険者の酒場 強すぎる女武道家
「あーあ。またやってるよ、あいつら。新米イビリ」
「ありゃ、見るからに弱そうだしな。」
遠目で見ていた冒険者達は、汚い布を被った奇妙な冒険者に、軽い哀れみを抱いた。
「あれ?今日は止めに入んないのかい?」
冒険者は隣のテーブルで一人で、ウーロン茶を飲んでいる武闘家に話しかける。
武闘家はその声が聞こえなかったのか、持っているグラスを中途半端な位置で止めたまま、大きな二重の目をパチリと開け、一心不乱に奇妙な人物とゴロツキとのやりとりを見つめていた。
「テメェー。俺たちに挨拶がないじゃねーか!」
ゴロツキAがふっかける。
「こいつ、水なんか飲んでやがる!」
ゴロツキBは大袈裟に嘲笑すると、カウンターからグラスを取り上げ、グラスの水を顔の布の上から注いだ。
勇者は微塵も動じず、ただただ座り続けている。
「帰んなボクちゃん。」
ゴロツキAは勇者の背後に回り込むと、勢いよく頭の布を剥ぎ取った。
「…モンスター!?」
ゴロツキ2人は驚き腰を抜かす。
騒がしい酒場は、一瞬の静寂に包まれた。
勇者は顔をブルッと震わせ、顔の水を切った。