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その3

「私を覚えているか?」


 床に突っ伏した彼の髪を掴み、少女は目を見て言う。空いた手で男に銃口を向けたままだ。


「し、知らない」


 男にとって全く見覚えのない女だ。覚えているどころか見たこともない。

 少女はその言葉が来ることをわかっていたようで、動じることなくその引き金を引いた。

 手製のサイレンサーによる汚い銃声が2回響き、男の目は大きく見開かれる。


「2年前の2070年8月23日だ! 思い出せ!」


 衝撃とともに猛烈な痛みが襲いかかってくる。少女は男の肩を撃ち抜いていた。悲鳴を上げようと口を開くとそこにあの汚い銃口を押しつけられて声を出せない。


「悲鳴を上げるか? 私は構わないがみんな殺したぞ、誰も助けに来ない」


 男は悟った。この女はイカレている。人を大勢殺し、無抵抗な人間に意味のわからない拷問をする。そしてそんなことをしてのけるその表情は恍惚の境地だ。これを気違いと言わずしてなんと呼ぶのか。


「そうか思い出せないか。私はお前らをこうして殺す時を待ちくたびれていたんだ」



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