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ホームレス少女  作者: Rewrite
天王寺奏編
40/234

5話

 女の子とぶつかってしまった後、特になにもないまま家に帰ることができた。

 ポケットから鍵を取り出しカギを開け、誰もいないのに「ただいま」と言ってから家に入り。大学用の鞄を所定の場所に片づける。

 掛け時計を見ると六時三十分。パーティーまであと三十分である。


「少しは早く行った方がいいだろうけど、まだ早いよね?」


 誰に言うでもなく独り言を言うが全く落ち着かない。部屋中を歩き回り、しきりに時間を気にしては時計を見て、まだかまだかと歩き回る。他のことを考えようにも考えに耽ってしまったらと思うと何も考えられない。僕にはそういう一面があるのはもう十二分に承知している。

 そんな時間がしばらく続いていよいよ待ちに待った五分前。

 自分なりにオシャレをした服に、ただ行くだけでは申し訳ないのでちょっとしたお土産を手に自宅を出て、階段を降り前の前の一軒家を目指す。


 もう何度も鳴らしたことのあるチャイムを鳴らし、いつもなら緊張もしないのに今は胸がどきどきしているのを感じる。少しすると中から小さな足音が聞え、インターホンから聞きなれた声が聞こえる。


「待ってました佐渡さん。ちょっと待ってくださいね」


 すると玄関から鍵の開いた音が聞こえ、中から彼方ちゃんが笑顔で出迎えてくれる。


「お邪魔します」

「はいっ。どうぞ」


 その笑顔に導かれながら家の中へと入る。


「いらっしゃい佐渡君」

「よく来たね佐渡君」


 パーティー会場となる居間に入ると、彼方ちゃんのご両親が僕を笑顔で出迎えてくれる。

 頭を下げて、もう一度お邪魔しますと言い直し、持ってきたお土産を渡す。


「これ、よかったらみなさんで食べてください」

「あら。ありがとう」


 彼方ちゃんのお母さんはそう言うと、中身を覗き込み、うれしそうな顔をしてからそれをキッチンへと持って行った。おそらく冷蔵庫に入れて保存するのだろう。喜んでもらえて何よりだ。今日持ってきたお土産は翔君たちにも相談に乗ってもらって買って来たものだ。今回の主役は彼方ちゃんだということで基本的に彼方ちゃんが喜びそうなもの、ということで今日持ってきたお土産に決まった。

 その後簡単な挨拶をお互いに済ませ、水無月家の人たちが全員座ってから唯一あいている席、彼方ちゃんの隣へと僕も腰を下ろす。


「それじゃパーティーを始めましょー」


 彼方ちゃんの号令によって楽しいパーティーが開催された。

 部屋はきれいに装飾されており。きらきら輝くひらひらした飾り物や折り紙で作られた織物、テーブルにも布を敷いて本当のパーティー会場のように部屋が飾られている。

 テーブルの上には彼方ちゃんのお母さんが作ったであろうご馳走がたくさん並んでおり、から揚げやサンドイッチ、ポテト、サラダなどなどたくさんの料理が並んでいる。

 その一つ一つ料理が僕が作ったものよりおいしそうに見え、きれいの盛り付けられている。僕も少しは料理ができる方だとは思っていたが、自分はまだまだなんだなと思い知らされる。

 何から食べようか悩んでいると彼方ちゃんがお勧めをおしえてくれた。


「佐渡さんっ。このから揚げなんてどうですか?」

「そうだね。じゃあから揚げからもらおうかな」


 彼方ちゃんの言う通りから揚げを取り皿にいくつか持ってきて、さっそく一つ口に放り込む。

 その様子を彼方ちゃんは少し緊張気味に、お母さんはニコニコと何か嬉しそうに、お父さんは少し額にしわを寄せながら僕の食べる様子を見守っている。


すごいみんなに注目されていてちょっと食べにくいな。

 そんな視線が集中している中、口の中に放り込んだから揚げは柔らかく、噛みしめるごとに肉汁が口の中いっぱいに広がりとてもおいしい。


「おいしいですねっ。僕が作ってもこんなにおいしいものはできませんよっ」


 驚きのあまり少し早口になりながらもどうにか料理の感想を口にした。あまりのおいしさにもう一つから揚げを食べる。何度食べても飽きそうにないほどおいしい。

 他の料理もこんなにおいしいと思うと僕の心が躍った。


「よかったわね彼方っ」

「さすが僕の娘だね」


 僕が素直に感想を伝えると、彼方ちゃんのご両親が彼方ちゃんに笑顔を向けてそう言った。

 そして僕は一つの結論に至った。


「もしかしてこのから揚げ彼方ちゃんが作ったの?」

「は……はいっ! お母さんに教わりながらですけど」

「すごいよっ。一緒に暮らしてた時から思ってたけど彼方ちゃんはやっぱり料理が上手だね」

「は、はうぅ~」


 彼方ちゃんはその場でうれしそうに縮こまってしまった。

 その様子をお母さんはニコニコと見守り、お父さんは先ほどと変わらず少し額にしわを寄せながら黙って見守っている。


ぼ……僕、お父さんをおこらせるようなことしたかな。

 少し不安に感じながらもパーティーは楽しく進行していく。



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