海
エンディミオン3 海1
「じゃあ、地下の格納庫で合流しよう」
三枝が言い、チームフェンリルは動き出した。
当麻side
「レーム。コガがSSSのシステムをハッキングして、無力化してくれたみたいだからさ」
「ああ、格納庫まで850メートル。敵はSSS本部にいる三千人」
「「一気に突破するか」」
レームが走りながらアサルトライフルを撃つ。
俺が使うのはヘルガの二丁拳銃だ。
ヘルガの銃身の下についている刃で近付く敵を切り倒していく。
「CQCを習い直してこい!」
百人くらいを斬ったときに、彼女は現れた。
「ひゅ~。美人だねぇ」
レームが笑う。
不謹慎だ。
「レーム!」
彼女はホルダーから二丁の銃剣付きデザートイーグルを取り出した。
「レーム」
「あいよ」
レームは先に進む。
彼女は動かない。
いや、俺がヘルガで牽制しているため、動けない。
「私はSSS特殊部隊隊長、十六夜亜希です」
「フェンリル遊撃担当。桐生当麻だ」
デザートイーグルは反動が強く、本来は片手で撃つ銃ではない。
それはヘルガにも言えるが、まあいい。
「あなたも二丁拳銃なんですね」
「ああ」
動けない。
動けばデザートイーグルに撃たれる。
お互いに銃口を相手に突きつけながら、こう着した状態を維持する。
パパン!
レームが銃を撃つ音が聞こえた。
俺たちは動き出す。
十六夜がデザートイーグルを撃つ。
それをしゃがんで回避し、下からすくい上げるようにヘルガの刃を十六夜の喉に迫らせる。
ガキンッ!
銃剣とヘルガの刃がぶつかり合う。
そのままの勢いで、後方に下がる。
「……ッ!」
デザートイーグルの弾が足元にめり込む。
「……行くぞ」
今度はこちらの番だ。
十六夜のデザートイーグルを狙い、ヘルガで撃つ。
「な……!?」
ヘルガの二発の弾が、二丁のデザートイーグルを弾き飛ばす。
しかし、
「はっ!」
十六夜の蹴りが二丁のヘルガを弾き飛ばした。
『コガ』
クラッカー。
ケビン・ミトニックの再来と言われている。
その腕前はウィザード級。
海2
三枝side
僕たちは格納庫まで車用の迂回路を通って向かっていた。
運転はアールだ。
細い道を難なく進んでいく。
アールが聞く。
「あと何キロだ?」
「三キロだよ」
その時、後ろから発砲音が聞こえた。
アールが叫ぶ。
「MOVE、MOVE! MINIMIで後方車両を破壊しろ」
「分かった」
マオがM249MINIMI軽機関銃で後ろの車を撃つ。
燃料に引火したのか、車が火に包まれる。
「やった、か……?」
マオが反論する。
「今のは斥候です。次からが本番です」
「げ……」
アールがハンドルを右にきる。
正規のルートから外れ、荒れ地に車が乗り上げる。
次の瞬間。
ドカン!
さっきまで走っていた道にクレーターが出来た。
撃ったのは戦車だ。
「10式戦車かよ!」
アールが車を正規の道に戻し、速度を上げる。
10式戦車の最高速度は70km/h。
対してハンヴィーは125km/h。
振り切れる。
「マオ! グレネードランチャーで戦車の砲身を狙え!」
「了解」
「三枝はM240で牽制しろ」
「分かった」
車と戦車の間が離れていく。
バン、バババババン!
戦車の重機関銃が火を吹いた。
「くそっ、防弾プレートが割れた音がしたぜ」
戦車の砲身が車を狙う。
マオがつぶやく。
「次は撃たせない……」
マオは体中の全ての感覚を指に込めた。
車は絶えず揺れている。
砲身の穴は小さい。
針に糸を通すくらいの精密さが要求される。
だが、
「簡単です……」
マオは撃った。
それは正確に戦車の砲身へ向かっていく。
そして、入った。
バン!
戦車の内部で爆発した音がした。
「やったな」
マオとアールが拳をぶつけ合う。
「仕事をしたまでです」
格納庫に着く。
そして、僕たちが見たのは……。
「なんだよ、これ……」
「嘘…………」
「あり得ない……」
海3
ガッ!
ドガッ!
俺は十六夜と殴り合いをしていた。
ナイフやサブの銃は二人とも使い切った。
俺のアサルトライフルは三枝に預けてある。
ヘルガを拾うヒマはない。
「は…ぁ…はぁ、しつこい」
「それはこっちのセリフだ」
十六夜の顔は殴られて腫れている。
俺の顔も同じなんだろう。
「ここは、引き分けにしないか?」
「ははっ、まさか」
笑われた。
わりと真剣な提案なんだがな。
「さて、俺は次の一撃で決着をつけるつもりだが、十六夜は?」
「私もです」
十六夜の足元にはヘルガが一丁ある。
同じく、俺の足元にもデザートイーグルが一丁ある。
「じゃあ……」
汗が一滴、顎から落ちる。
それが地面に落ちた瞬間。俺たちはそれを合図に動き出した。
「……っ!」
「……は!」
足元の拳銃を二人同時に蹴り上げる。
そして、十六夜が撃った。
パン!
射撃音は一発のみ。
ヘルガから弾が発射された。
集中しろ。
ヘルガの弾は特殊弾。
まず、装甲を貫通し、内部で爆発するタイプの弾だ。
つまり、一度の衝撃では爆発しない。
銃剣を反射的に横にする。
銃剣にヘルガの弾が当たる。
それを感知した指先が銃剣をパージする。
銃剣が落ち、爆発した。
「な……!?」
「終わりだ」
すかさず、デザートイーグルで十六夜の腹部を撃った。
「生きてたら、またどこかで会おうぜ」
ヘルガを回収し、格納庫へ向かう。
「桐生……当麻……」
格納庫までは死体の山だった。
「レーム……」
格納庫に着く。
入口ではレームがタバコを吸っていた。
「お、遅かったじゃん。何その顔?」
「いや、いろいろあって……」
レームがタバコを足で踏んで消す。
「こっちも問題があってな……」
「なに?」
レームが手招きする。
格納庫に入る。
「SSSのやつ、とんでもないバケモンを作ってやがった」
「な……」
格納庫には、全長が300メートルもある巨大な潜水艦があった。
アガルタ・ザ・スモーキー・ゴッド
通称 レムリア
型式番号 ATSG-1
設計者 レニ・サンクソン
氷魚・花月
艦種 強襲揚陸潜水艦
全長315m
全幅50m(潜舵除く)
排水量 30900t(水上)
45000t(水中)
主機 パラジウムパッケージ×5
電気駆動(210000hp)
最大速力 35kt(通常推進のみ)
45kt(通常推進・見えざる手併用)
60kt以上(超伝導推進・見えざる手使用)
標準武装 533mm魚雷発射管×6
多目的垂直ミサイル発射管×10
弾道ミサイル発射管×2
Mk48Mod6 ADCAP魚雷
「アド・ハープーン」対艦ミサイル
「トマホーク」巡航ミサイル
他多数
所属 SSS極東本部作戦部アガルタ・ザ・スモーキー・ゴッド
就航年月日 2013年4月25日(予定)
艦長 氷魚・花月 (予定)
海4
「コガ。ハッキング出来そう?」
格納庫ではコガがレムリアをハッキングしていた。
「ハッキング終了。あとはエンターキーを押すだけでおk」
キーをコガが押す。
レムリアの上部甲板が開いていく。
そこには軍用ヘリ三機があった。
「アパッチ。それも三機も」
「その他にも弾道ミサイルやトマホークなどがあるみたい」
コガや俺たちはレムリア内部に入る。
と、
『ようこそ、レムリアへ。私はレムリア総合管制システム、テッサです』
女性の声でアナウンスが鳴る。
三枝がつぶやく。
「なるほど、一人で運用可能ってそういうことか……」
アールが発令室に入る。
そこは洗練されたデザインで作られ、中央には萌えキャラの女の子が映し出されていた。
銀髪を三つ編みにしている。
年は、十六歳くらいだろうか?
「私がテッサです。よろしくお願いします」
アールがぼやく。
「なんか……さすが日本って感じだな」
コガ、マオと三枝、レーム、アールはここにいる。だが、
「そういえば、タカと北条は?」
三枝が説明する。
「出口にC4を取り付けに行ったよ」
「なんで?」
コガがノートパソコンを見せる。
「システムの電源を切られた。手動で格納庫の出口を壊すしかない」
「ふーん」
北条たちが戻ってきた。
「C4の取り付け、終わったよ」
「お疲れ」
「じゃあ、レムリア、出航」
三枝の指示でテッサがレムリアを発進させる。
「じゃあ、爆破、いくよ」
北条が携帯電話でコールする。
バキューン。
キューン。
キューン。
連鎖して爆発が起こる。
出口の扉がパズルのピースのように崩れていく。
「さあ、行こうか」
三枝が宣言する。
「海へ」
海5
出航してから半日。
早くも問題が発覚した。
「火器管制システムが使えない。それに食料もない!?」
三枝が頭を抱えてゴロゴロ転がっている。
俺もため息をつく。
「どっかに寄らないとな」
コガが保存食をボソボソ食べながら言った。
「なら、北海道に寄って氷魚花月を拉致するついでに食料を補給したらいいと思われ」
北条が尋ねる。
「氷魚花月? 誰?」
コガがパソコンの画面を見せる。
「氷魚花月。レムリアの開発者兼艦長。火器管制システムが使えないのは彼女の承認がないため」
三枝がコガに耳打ちする。
コガは頷いた。
「新たな作戦だ。食料の確保と氷魚の確保。当然SSSも動いてる。ってことで」
ビシッと指を指される。
「北条、アールは食料確保」
「うーい」
「分かった」
次はコガとマオの方を向く。
「コガとマオはここに残って後方支援」
「おk」
「了承した」
「あとは僕と氷魚の確保だ」
パクった車で北海道を走る。
運転はレームだ。
助手席には三枝。
その後ろにはタカ。
横に俺だ。
三枝が語る。
「氷魚はわずか十歳でケンブリッジ大学を首席で卒業した天才だ」
レームが聞く。
「そんな天才がなぜあんなバケモンを開発したんだ?」
「それは、本人に聞かないと分からないな」
車が氷魚の所属するSSS支部に到着する。
「俺が陽動する。レームと三枝、
タカは氷魚を確保してくれ」
レームが何かを渡してくる。
それは地図だった。
「もし、氷魚の確保で手一杯の時はそこで合流な」
「分かった」
海6
氷魚花月の人生は勉強ばかりの生活だった。
人に言われるがままに勉強して、そして、首席で大学を卒業した。
だが、自分のやりたいことはそんなことではない。
断じて、兵器の開発ではない。
なら、なぜSSSに協力したかというと、レムリアを途中で強奪し、レムリアの武力を抑止力として世界を平和にするためだ。
だから、フェンリルがレムリアを強奪したと知った時は動揺した。
だが、すぐに冷静になった。
火器管制システムは自分の認証が必要だ。
だから、フェンリルは次にわたしを狙うだろう。
だから、逃げなくてはいけない。
「大丈夫。大丈夫……」
ベッドのシーツを結んで作ったロープで六階から一階に降りる。
SSSに居ても、レムリアを強奪された今の自分はただの邪魔者でしかない。
かすかに声が聞こえてくる。
「氷魚博士が逃げたぞ!」
「探せ!」
「場合によっては射殺して構わん!」
「……嫌だよぅ」
走る。
逃げる。
そして、彼と出会った。
「氷魚……花月……?」
「あなたは、だれ?」
彼は返り血で服を汚していた。
その手には銃身にアーチ状の刃を持つ二丁拳銃が握られていた。
「伏せて!」
彼が叫ぶ。
わたしはとっさに伏せた。
パン!
後方からやってきた兵士が倒れる。
その頭は熟れたザクロのように潰れていた。
「氷魚花月。こっちへ」
敵、ではないだろう。
わたしを守ってくれたのだから。
彼の近く、車の影に隠れる。
「コガ。この車のスマートキーをハッキングしてくれ」
『了解』
車のエンジンがかかる。
「乗って」
「あ、はい」
SSSの兵士が銃撃を浴びせる。
だが、防弾ガラスなのか、車にたいしたダメージはない。
「レームたちに氷魚を確保したと伝えて」
『おk』
わたしはつぶやいた。
「あなたは、一体?」
「俺はフェンリルの遊撃担当。桐生当麻だ」
「桐生……当麻……」
彼は聖人のようだった。
人を殺していながら、その瞳は曇っていない。
業物の刀は、なにを斬ったかによって決まる。
きっと彼は、業物の刀なのだろう。
殺しをしながら、一方で聖人のような雰囲気を醸し出している。
「わたしは……」
彼になら託せる。
わたしのレムリアを。
海7
「食料の積み込み、終了っと」
アールが汗を拭く。
「お疲れ」
アールは北条が買った冷たいコーラを一気飲みする。
「当麻たち、氷魚花月を確保したかな?」
「マオに聞いてみる?」
その時、携帯電話が鳴る。
『マオです。無事に氷魚花月を確保しました』
「だってさ」
北条は缶コーヒーを飲む。
「とうとうかな……」
復讐劇の開始だ。
我々は夢と同じ物で作られており、我々の儚い命は眠りと共に終わる。
「まずは誰からやる?」
三枝はヒオを除いた全員に向かって会議室で言った。
「というか、みんな、やりたいことを言ってくれる。やり易いことからやるから」
レームがタバコを吸う。
「俺様は同僚を撃った犯人の殺害だ。やつは今はアメリカの死刑囚収監施設にいる」
マオがしゃべる。
「わたしは特にない。強いて言うなら中国に残してきた恋人と結婚したい」
北条が手を上げる。
「わたしは自由の女神を爆破したい」
タカが前に一歩進んだ。
「私は師匠と決闘がしたい。師匠は今、島根県にいる」
師匠。その響きに胸がうずく。
だが、今はそれを隠す。
アールがしゃべる。
「オレの願いは叶っている。こんなすごい船に乗れたんだ。未練はないさ。まあ、欲を言えば世界一周でもしたいかな」
三枝がため息をつく。
「じゃあ、まずは島根県にいる師匠とタカの決闘だな」
一同が頷く。
「次はレームと北条。その間にマオは中国へ。それで文句はないな」
頷く。
「じゃあ始めますか」
復讐劇を。




