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私の僕の妹愛(しすこん)、弟愛(ぶらこん))育成記

作者:

パソコンが壊れて恋姫の更新が出来なくなったからムシャクシャしたので携帯で書いた。



取り敢えず謝ります。すいませんでした(ドヤッ

もう何年も前の光景が目の前に広がっている。あぁ、懐かしい夢だなぁって思いながらも目の前に居る男の子を見やると私の頭に手を置いて笑顔で撫でてくれる。当時の私も嬉しそうに撫でられているのを見て自然と笑みが零れ、自然に口が開いて当時の私と同じ台詞を重なって言った。



「兄ぃ、五月さつきね、大きくなったら兄ぃのお嫁さんになる!」




~~~私の僕の妹愛しすこん弟愛ぶらこん育成記~~~



時計の電子アラームが鳴り響く室内。私は五月蝿く鳴り響く目覚まし時計に手を伸ばし、耳障りこの上ない時計を黙らせて布団から這い出た。



「朝…か。」



障子を通して尚眩しい朝日を見つめ、軽く背伸びした私は鏡の前に立つとパジャマを脱いで制服に着替える。



「兄ぃ起こさなきゃ…」



部屋を出てある部屋へと向かう。私の名前は備前五月びぜんさつき、この家に住む三兄弟の二番目で長女。現在高校一年生で青春満喫中の悩める乙女だ。

家族構成は兄一人、弟一人。両親は三年前に離婚しており三人共お父さん側に引き取られたんだけど、仕事が忙しいらしく滅多に帰っては来ないので実質私達兄弟で暮らしているようなものだ。

そんなこんなで私は兄ぃの部屋にたどり着くと静かに扉を開けて中に入る。



「兄ぃ~起きて~起きなきゃ布団に入り込むぞ?」



兄ぃに聞こえないよう小声で話し掛けるが反応は無い。よし、私はちゃんと忠告した。ちゃんと忠告したのに起きない兄ぃが悪いんだ。



「それじゃ失礼しま~す♪」



布団を静かに摘み、自分でもびっくりする位のスピードで兄ぃの布団に入り込み兄ぃの温もりと抱き心地を堪能しようとした私だが…



「…冷たい。それにこの感触…」



心の栄養剤である兄ぃの温もりが、今日一日を頑張れるってなる筈の抱き心地が…無かった。



「………………まさか!?」



布団を剥ぎ取ると居るはずの兄ぃは居らず、大きなまぐろのぬいぐるみが無言で横たわっている。このぬいぐるみ兄ぃが睦月に買ってあげたものじゃ…あっ!?



「しまった!?」



布団から跳ね上がり急いで弟の部屋へ向かう。あ~私の馬鹿っ、そりゃあ無反応な筈だよ鮪だもん!

急いで弟の睦月が寝ている部屋へとたどり着くと落ち着くために一回深呼吸。私の予想通りなら…



「………(やられたっ!)」



部屋に入り、睦月の布団を見ればすやすやと寝息を立てる兄ぃと…兄ぃに抱き付いて同じく寝息を立てる弟、睦月の姿。

二人の寝姿はとにかく距離が近い。兄ぃの頬に唇が当たるくらいの至近距離で幸せそうに眠る睦月が非常に恨めしい。私でも最近あんなにくっ付いて寝て無いのに…



「朝だーっ!二人とも起きろーっ!!」



兄ぃの寝顔は涎ものだが睦月がくっ付いているとなれば話は別だ。二人を夢の世界から引きずり出すべく声を張り上げながら布団を剥ぎ取る。すると二人は寒さからか身震いしながらもゆっくりと起き上がる。



「五月ぃ~もう少し優しく起こしてくれよ…」



最初に起き上がったのは兄の水無月みなづき。私の2つ上で同じ高校の三年生だ。



「うっさい!兄ぃが睦月と一緒に寝て寝坊するのが悪い!」



「んな無茶苦茶な…って分かった分かった、そんなに睨むな。」



文句を言っていた兄ぃだがキッと睨むと欠伸をしながら背伸びをし、隣で寝ていた睦月を左手でゆさゆさと揺らす。



「睦月~起きろ~起きなきゃ五月に襲われんぞ?」



「私は痴女かっ!」



流石は寝起きの兄ぃ。まだ小学五年の睦月に普通は言わないような事を言う…

しかし兄ぃの言葉に睦月は反応し、ゆっくりと瞳を開く。



「水無兄ぃ(みなにぃ)抱っこ…」



「おはよう睦月、まだ寝惚けてんな…よっと。」



「あぁっ!?」



なんという事でしょう!

兄ぃに抱っこして貰ったあげくに頬にちゅ~するとか!私の前で兄ぃに甘えるなんて…睦月、後で覚悟しなさいよ?



「水無兄ぃ、お返しのちゅ~は?」



「ったく、睦月は甘えん坊だな。」



「あがぁぁぁぁぁっ!?」



兄ぃっ、何で私にはしてくれない癖に睦月にはほっぺにちゅ~はするの!?そりゃあ睦月はそこらの女の子よりも可愛らしいしスカートとかも似合うだろうけどさ…弟だよ!同性だよ!睦月なんかより私の方が少しは胸有るし異性だから問題無いんだよ?

なのに睦月ばっかり…兄ぃ今日は朝御飯抜き!




~~~居間~~~



「出来たぞ~。今日は御飯に味噌汁、焼き鮭に玉子焼きだ。」



台所から三人分の食事を運ぶ兄ぃの声に私達も手伝いへと向かう。兄ぃが作っている最中から居間に美味しそうな匂いがしてたし兄ぃ料理上手だから毎朝楽しみなんだよね。



「水無兄ぃ、早く食べよ?」



「待ってろ睦月、今行くからな。」



催促する睦月に返事をしながらエプロンを外す兄ぃ…エプロン姿似合うなぁ。私と結婚したら毎日私だけの為に…



「五月姉ぇ…笑顔怖い。」



「あっ、ごめんごめん。」



いけないいけない。ちょっと先の未来を想像したら涎が…



「お待たせ五月に睦月…ささ、いただきます。」



「「いただきます。」」



~~~少しの間、三兄弟の食事風景をお楽しみ下さい。~~~



「水無兄ぃ、あ~んして?」



「はい、あ~ん。」



「兄ぃ!私っ!わた五月にもあーんっ!!」



「水無兄ぃ、睦月からもあ~ん♪」



「ん、美味しいよ睦月。」



「えへへ~。またあ~ん、して?」



「私を無視するなぁぁぁぁぁっ!!」



~~~洗面所~~~


「あ゛~兄ぃめ、私より睦月の方があ~ん二回も多いとか…今夜風呂場に乱入してやる。」



決意を新たにした私は鏡に向かい黒く長い髪を後ろに集めゴムで束ねる。



「いよっし、今日も兄ぃの好きなポニーテール出来上がりっと。」



腰までとはいかないが背中の真ん中位まで伸びた髪を束ねるのにポニーテールは大変役に立つ。正直髪を短くすることも考えたが兄ぃの部屋にあるアイドルの写真集は八割方が黒髪で長髪の子ばかりだ。兄ぃの好みに合わせれば…と伸ばした結果、ケアは大変だけど兄ぃが頭を撫でてくれる回数が心なしか多くなったので効果は抜群だったのだろう。



「睦月、俺は先に行くから戸締まり頼む。」



私がセットし終えた頃合いを見計らってかセミロングの髪を首筋に沿うよう束ねた兄ぃが顔だけ覗かせる。



「うん、私も睦月を送り出したら行くね。」



行ってきます。と先に登校した兄ぃを見送った私も睦月を送り出して学校へ…の前に、どうしてもやらなきゃいけない事が有る。



「む~つ~き~、お姉ちゃんとちょっとお話しようか?」



そう、今朝から私を出し抜きまくりな弟、睦月を拷も…尋問しなければならないのだ。



「五月姉ぇ…怖い。そんなんじゃ彼氏出来ないよ?」



ショートカットの黒髪を揺らし、ハムスターみたいにプルプル震える睦月を出来るだけ怖がらせないよう笑顔で近寄る。うん、笑顔だったら怖くない。



「怖くなんか無いわよ。えぇ、私は怖くない。それに私には兄ぃが居るから他の男になんて興味ない。睦月、最近兄ぃに甘えてばかりよね?」



昨日は一緒にお風呂だったし今朝は兄ぃの添い寝?私の役目取らないでくれる?



「うん、だって水無兄ぃが好きなんだもん。」



やはりか…弟なのに兄が好きとか、普通に大問題だからそれ。



「あんた女の子っぽいけど男の娘でしょ!同性じゃ問題しか無いんだから兄ぃの将来は私に任せなさい。」



「やー!五月姉ぇはそう言って何時も水無兄ぃを独り占めするんだもん!それに水無兄ぃは将来睦月とカナダに行って二人で暮らすの!」



カナダか…そう言えば男性同士で結婚したとかニュースで見たわね。しかし、私の将来設計を邪魔するライバルがこんな身近に居たとは…



「兄ぃと結婚するのは私よ睦月。早く同級生の彼氏でも見つけなさい。」



「五月姉ぇこそ早く彼氏作ってね?」



ああ言えばこう言うし…しかも危ない思考持ちとか誰に似たんだか。けど睦月が今のまま甘えまくったら、兄ぃは睦月にデレデレになっちゃうかも…


こうなったら…



「睦月の好きにはさせないわ。」



「五月姉ぇの思い通りになんてさせない。」



睨み合う私と睦月。竜虎相まみえるとは多分この事を言うんだろう。そして…睦月は今から心の中で叫ぶ決意と同じ事を考えているだろう。



「(私が!)」



「(僕が!)」



「(兄ぃ・水無兄ぃを立派な妹愛しすこん弟愛ぶらこんにしてみせる!!)」



私と睦月。一人の兄を巡った骨肉の戦いが今幕を開けた。



「取り敢えず学校に遅刻しちゃうから出よっか。」



「うん、五月姉ぇ行ってきます!」



「はい行ってらっしゃい。車には気を付けなさいよ?」



時計の針がそろそろレッドゾーンを差しそうな時間なので急いで家を出た私と睦月は学校目掛けて走り出す。二人して遅刻なんてしたら兄ぃになんて怒られるか…




~~~学校・1ーC教室内~~~


息を切らしながら教室へと入った私に茶髪でショートカットの女子が寄ってくる。



「おはよう五月、こんなギリギリに来るなんて何か有った?」



ニヤニヤ顔で私に寄ってきた子はめぐみ。小学校からの腐れ縁で私の良き理解者だ。



「おはよーめぐ。いや朝からちょっと諍いが有ってね…」



流石に睦月と兄ぃの取り合いになったとか聞いたらめぐも退くだろうな~…いや、めぐなら嬉々として煽りそうだから言わない方が良いか。



「大方睦月ちゃんとにぃにの取り合いでもしてたんだろ?」



…バレてた。というか私は今日気付いた驚愕の事実なのに何故めぐが知っているんだろうか?



「なんでって顔してるね五月、睦月ちゃんがブラコンだって気付いてないの五月とにぃに位なもんで周りは皆知ってるよ。」



「ほぇ~」



開いた口が塞がらないとは良く言ったものだ。私が今朝知った驚愕の事実は皆の常識だった。…今の今までライバルの存在に気が付かなかったとは私の目は節穴か?節穴アイなんだな?



「いや、あんたにぃにの事しか視界に入って無いんだもん。」



「こんな事っ、こんな事あって良いのか神よ!」



「はいはい、関係無い神様を逆恨みしない。さっ、先生来たから席に着くよ。」



世の無常を感じ取り絶望に打ち拉がれていた私だが授業が始まるとあって大人しく着席し、真面目に授業を受けるふりをしながら今後の対策を練り上げる。…睦月めこうなったら私もなりふり構っていられないんだからね!



「やるっきゃない!やるっきゃないよ私!」



「…睦月さん、何をやるかは知りませんが取り敢えず廊下に立ってなさい。」



「……すいません先生。」



怒られたよ…めぐが私を見てにやにやと笑っている。奴め、兄ぃから預かっているお弁当渡さないからね。




~~~昼休み~~~



「いや五月ごめんって。謝るからにぃにのお弁当頂戴よ~。」



「嫌だね。私を笑った薄情者には兄ぃのお弁当を食べる資格は無い。」



私とめぐは三年の教室がある二階へと階段を降りていく。理由は勿論兄ぃと一緒に昼食を食べるためだ。



「にぃに居る~?五月がお弁当取り上げるんだよ~およよ…」



自分は悪くないのに的な仕草で兄ぃに話し掛けらるめぐだがこんな事日常茶飯事だ。兄ぃは茶化す友人達に挨拶しながら私達の方へと近寄ってくる。



「五月にめぐ…お前達最近毎日来てないか?」



「良いじゃん兄ぃ、屋上行ってお昼にしよ。」



取り上げていためぐのお弁当を返し兄ぃの手を掴んで屋上へと階段を上っていく。兄ぃが「行くとは言ってない。」とか往生際悪く言い訳しているが私達に近寄る際お弁当をきっちり持ってきてるあたり説得力が無いよ兄ぃ。

まぁ、兄ぃもこうなるの予想してるんだろうね。ここ三ヶ月位毎日お昼一緒だし…



「青い空!白い雲!そしてにぃにのお弁当!!いやこれで午後も乗り切れますな五月さん。」



「あらやだめぐさん、これで兄ぃがあ~んとかしてくれたらもっと頑張れますわよ?」



屋上の隅に設置されたベンチに兄ぃを挟むよう腰掛けた私達はのどかなランチタイムを満喫し始めた。



「お前達、露骨にあ~んほしがるなよ…つか弁当の中身は皆一緒だしやる意味な「兄ぃは甘いっ!」…はぁ。」



「五月の言うとおりだよにぃに、私達二人はにぃにに食べさせて欲しいのさ~♪にぃにの愛が有るってのが大事なんだよ。」



「今の御時世愛で空が落ちてくるんだよ?愛ってその位強大で偉大なの。」



「昼間から蒼く光る星が見えそうな御時世だなおい。ほら、時間無いんだから口開けろ。」



呆れ口調ながらも一口サイズに切り分けられた厚焼き卵を私の眼前に持ってくる兄ぃ。多少ムードに欠けるが待ちに待ったお昼ご飯開始の合図に私は口を開けてそれに応える。



「あ~ん♪」



口の中に広がる甘い味。その味を文字通り噛み締めてゆっくりと咀嚼する。うん、やはり兄ぃが作る料理は美味い。女としては敗北感が結構有るけれど…



「そんなの些細な問題だよねめぐ!」



「よく解らないけど同意だよ五月。」



だって兄ぃの手料理を兄ぃの手で食べさせて貰えるなんて至福の一時を前にしては女としての『何か』よりも兄ぃの方が大事である。そんな当たり前のこと言わなくてもめぐなら分かるはず。というか察しろ。



「はいにぃに、あ~ん♪」



「ん、じゃあめぐはウインナーな。ほれあ~ん。」



「ってちょっと待てぇぇぇぇぇぃっ!!」



兄ぃもめぐも何やってんの!?何やってんの!?



「はにっへ…んくっ、五月と同じであ~んしてもらっただけじゃん。」



「違う違うっ!確かに私はあ~んしてもらったけど1アクション余分に入っているから!」



あ~んしてもらうだげじゃ飽きたらずに互いに食べさせあうってどういうことよ!?

しかもめぐは然り気無く兄ぃの太ももに手を置いて寄りかかったいるし…油断も隙もあったもんじゃ無いよまったく!



「いい加減飯位静かに食え馬鹿妹共…」




~~~放課後~~~



兄ぃ成分を昼休みに充電できたお陰か私とめぐは午後の授業を他愛もなくこなし、そして放課後になった瞬間兄ぃの居る教室へと駆け出した。



「急ぐよ五月!にぃにを捕まえて喫茶店で放課後ティータイムと洒落込もうじゃないかっ!」



「ヒャッハー!兄ぃの奢りだぁ~っ!」



兄ぃの財布?中身位把握しないで何が妹か!それに今日兄ぃはバイトのお給料が入っていると私は知っている。

さぁ兄ぃ!育ち盛りな私とめぐのため、樋口さんを生け贄にパフェやらケーキを召喚するのだ!


階段を駆け上がり直ぐに右の廊下を走り抜けた先に有る扉に手を伸ばす。


ガララッ!



「兄ぃっ!私達と今から行く場所を言ってみろーっ!」



「あぁ、水無月君なら核ゲーがしたいって六時限目サボって帰ったよ。」



「なぁ~ぜだぁーっ!?」



教室を見渡せばまたお前等か…。といった視線が私達に向かって飛んでくるがそれどころじゃ無い。

隠れているなら愛の力を駆使して気配なり匂いで探知出来るから私には確かに兄ぃが教室に居ないのが理解できた。

兄ぃめ…こうなると予想して先手を打ったな…



「どうやらここまでのようだ…」



兄ぃが居ないと分かったからか暗い顔で諦めを口のするめぐ…まだだよ、まだ終わらないよめぐ。



「何故諦める必要があるのめぐ?」



「え?だって…」



「何を迷うことがあるの!」



戸惑うめぐをしっかりと見つめ力強く拳を握り締めて目の前へと突き出す。



「いや、あの…ここ俺等の教室なんだけど。」



苦笑いで話し掛けてくる兄ぃの友人をスルーして腕を横に振り払い携帯を取り出してめぐに見せる。



「んっふっふ~、今は科学が微笑む時代なんだよ。こんなことも有ろうかと、兄ぃの携帯と私の携帯はこっそりカップル登録をしてある…そして私の携帯には彼氏の行き先を追尾するアプリケーションが入っている!」



「流石は五月、にぃにのプライバシーとかモラルとかは投げ捨てるもの。だと言わんばかりの鬼畜な諸行だね!」



「悪魔だーっ!?モノホンの悪魔が居やがるっ!?」



私達の近くで兄ぃの友達が叫んでいるが些細な事だ。それより今は…



「早速アプリ起動…よしっ、行くよめぐ!」



「ケーキバイキングにレッツゴー!」



携帯の地図上に表示された赤い線とピンクの点滅する丸マーク。

逃げた兄ぃを捕まえるために私達は廊下を駆け出した…



~~~ゲーセン~~~



『ヒャッハー!』



近付いてくる相手に対し俺は先程設置したガソリンにマッチを投げ付ける。相手は丁度攻撃モーションを出していたようでカウンターヒットとなり七星ゲージが一つ減った。


…これで体力は此方がリードしているがお互い七星ゲージの残りは2。2ラウンド先取でどちらも1ラウンドずつ得たこの状況では例え弱パンチが一発当たっただけでも瞬く間に死に繋がってしまうこのゲームでは体力優勢でも七星ゲージが無くなって死兆星が自分の頭上に輝いていたら即死必殺技を喰らって敗北してしまう。



「(攻め手に欠けるか…)」



自分の使うキャラクターはこのゲームの中では弱い部類に入る…と言うか最弱だ。相手のキャラも下位に位置するがガードを壊す性能は優秀だし難易度は高いが投げ攻撃以外を無効にするバグを持っている。此方だって発生の速い必殺技や成功率は5%程度だが永久コンボも有る。しかし永久コンボに必要な自分を加速させるブーストゲージはスッカラカンだしそもそも永久コンボが出来る程の腕は無い。必殺技を使おうにも必殺技ゲージは貯まりきっておらず自分の置かれた状況に少しばかり舌打ちしたくなる。



「…ガソリン設置と迎撃メインで立ち回れるか?」



『逃げられんぞぉ~っ!』



直ぐ様ガソリンを設置してバックステップ、ガソリンを避けて上空から襲撃される可能性も有るので上空に向けてショットガンを一発放っておく。



『南斗獄っ!…貴様ぁ~っ!』



勘が当たったのかガソリンを避けて上空から突っ込んできた敵が必殺技を出してきたがショットガンのお陰で難を逃れた…流れは此方に傾いた。そう判断した俺は相手の向かって走るようレバーを傾ける。



近付いたら弱パンチでガードを誘いしゃがみ弱キックに切り替える。そう考えて弱パンチのボタンを押した俺………だが出た技は違うものだった。



『うらあっ!』



相手側にレバーを入れたまま弱パンチを押すはずが膝蹴りが出た、誤って弱キックのボタンを押してしまった…勿論ガードされる膝蹴りは発生後の隙が弱パンチの比ではなく多いため無防備な状態をさらけ出しとしまう。



『デエィヤーッ!』



硬直でしゃがみキックどころかガードすることも出来ず相手のぶっ飛ばし攻撃で画面端へと飛ばされる。ぶっ飛ばし攻撃で星が一つ消えるが問題はその後、追い討ちしようとブーストを使用して加速する相手。ガソリンの上では速度が低下するため追撃が間に合わないことも有るがガソリンの存在は相手も承知済みだったようで追加でブーストを消費して更に加速してくる。



『南斗迫破斬!』



追撃一発目は星を減らす必殺技、自分のキャラクターの七星ゲージは空になり蒼く光る死兆星が出現する。



『南斗孤鷲拳奥義!』



相手キャラクターの即死必殺技が自分のキャラクターに当たったのを確認した俺は静かに席を立って自販機へと歩き出す。

後ろからは即死必殺技が成功した際に流れる処刑BGMと自分が使用していたキャラクターの断末魔が耳に入って来る。ごめんな弱くて…



「居たっ!にぃにーっ!」



先程の戦闘を振り返って一人反省会に勤しもうとした俺の脇腹に妹の親友であり幼馴染みでもある声が聞こえたと同時に衝撃が走った…




~~~水無月が負ける数分前~~~



世の中は色々と便利なものである。

兄ぃの居場所を探すのにそれほど時間は要しなかったし真剣な表情を画面に向ける姿はきっちり写真に収めてある。

まぁ、兄ぃが負けたのは少し悔しいけれど…



「にぃにーっ♪」



「兄ぃ♪」



負けた兄ぃを慰めようとしたのかめぐは兄ぃへと飛び付いて人前だと言うのにぎゅっと抱き締める。

勿論それに便乗しない私ではない。直ぐ様めぐの反対側に位置取って逃げられないように腕を抱き締める。




「ぎゅっとしたな。」



「あぁ、ぎゅっとしたな…」



周囲の人達にはゲームを操作することすら忘れて此方を見ている人達も居るが好都合。既成事実を作り上げて兄ぃの彼女アピールをしておけば外堀を埋められる。



「お前等…こんなとこまで何の用事「にぃにの奢りでケーキ食べに行こうよ!」…さいですか。」



「ささっ、行こ行こ。」



そう言いながら兄ぃの腕を引っ張って歩き出すと兄ぃは多少溜め息を吐きながらも抵抗せずに歩いてくれる。



「あ~、それなら店選びに提案が有るんだが…」



「にぃにと一緒なら何処でもいいさー♪」



「さ~てめぐ、兄ぃお勧めのお店とやらに進撃だっ♪」




~~~備前家・リビング~~~



「ただいまー、睦月ーお土産買ってきたぞ。」



がチャリとドアを開けて兄ぃは手に持ったケーキの入った箱を目の前に持ち上げる。結局兄ぃは「睦月一人除け者にしたら可哀想だし買って帰ろう。」と言ってめぐもそれに賛同したため買って帰るという選択肢を採った。…睦月が居たら兄ぃにあーんした際に頬っぺたにクリーム付けちゃったから舐めてとるね♪作戦は使えない。次回に作戦延期かぁ…儘ならないなぁ。



「「たっだいま~」」



次いで私達も玄関へと入って帰ってきた事を知らせる。めぐも勝手知ったるなんとやら、お邪魔します。ではなくただいまで違和感が無いのはやはり幼馴染み故だろう。

私達が帰ってきたのに気付いたのかリビングから睦月が出てきてトテトテと兄ぃへと駆け寄っていく。



「水無兄お帰り~。…お帰りのちゅーは?」



「こら待て弟。」



全くもってこの男の娘は何をとちくるった事を言い出すか、常識的に考えてお帰りのちゅーは私の役目だろうに…



「しない。ほれ、ケーキ買ってきたから皆で食べような。」



やんわりとケーキを渡しながら睦月の頭や頬を優しく撫でながら皿とか用意してくれと頼む兄ぃ。兄ぃのお願いなら…と嬉々としてリビングに向かう睦月を眺めながら追い掛けるようにリビングへと歩き出す私達。



「むーちゃん素直で可愛いね~、流石は将来私の妹になる娘。」



「いやアレ弟だから。っていうか何?兄ぃの嫁枠ならもう16年前から私の物だよ?」



「大丈夫、私の婿枠には前世からにぃにが入ってるから。」


よし、今目の前に居るのは親友で幼馴染みなんかじゃ無い。私の敵だ。



「どうやら雌雄を決する時が来たようだねめぐ…」



「おっ、タイマンババ抜き?それとも勝った方が脱ぐタイマン脱衣麻雀?」



「兄ぃ審判の脱衣麻雀でお願いします。」



負ければ兄ぃの前で堂々と裸になれる。勝負という大義名分が有る以上審判をする兄ぃは私達を見続けなければいけない。流石はめぐ、私の親友兼幼馴染みだけあってしっかりとポイントを掴んでいる。



「五月にめぐ、馬鹿な事を言ってるならケーキ先に食うぞ?」



「「今行くよ~」」



リビングに入れば既に兄ぃと兄ぃの膝の上には睦月がスタンバイ。…しまった、めぐと言い合う事で睦月に付け入る隙を与えてしまったことに少しだけ歯軋りをするがまだ両脇が空いている。直ぐ様めぐとアイコンタクトをして両脇を陣取るように座り兄ぃに体を傾けて寄り添った。






その後もまた大変だった。



「水無兄、沢山撫でてぎゅ~って抱きしめて?」



「睦月ぃぃぃぃっ!あんたさっきからくっつきすぎ!」




睦月は食べさせてもらうだけでは飽きたらず、兄ぃに甘えまくりなので注意した私と口喧嘩になったり…



「にぃに、あ~んして?」



「ん、ほれ。」



「んっ…えへへ、にぃに~これから毎日朝昼晩ってずっと食べさせあいっこしようよ~♪」



「抜け駆けってか告白染みたこと言いながら迫るなめぐっ!麻雀勝って脱ぐぞ!?」



「五月、頼むからそれはやめろ。」



睦月と口喧嘩している隙に兄ぃに迫るめぐをインターセプトして麻雀勝負にもつれ込みそうになったり…



「兄ぃ、このモンブラン美味しいから食べて。」



「いや両手お前等が掴んでて喰えな「しょうがないな~兄ぃ♪」は?」



フォークで取ったモンブランを唇で挟み兄ぃへと顔を向ける。



「ん~♪」



「させないよ五月!」



「水無兄に口移しするのは睦月の役目なのーっ!」



私のモンブラン口移しでそのまま舌入れちゃえ☆作戦を邪魔されたり…私の完璧かつ美しい作戦が…




なんだかんだ騒がしくも賑やかで楽しいティータイム。まぁ、騒いでいるのは私達だけなんだけど…不意に紅茶を飲んでいた兄ぃが目を細めて私達を見やる。



「なぁ、三人とも…」



「「「?」」」



優しく私達の頭を順々に撫でる兄ぃ、勿論撫でられる側の私達は嫌がる訳もなく大人しく撫でられる中、兄ぃはゆっくりと口を開いた。



「三人とも…仲良くしなきゃ駄目だぞ?俺はお前達が喧嘩して仲が悪くなったら嫌だからな。」



「うん、睦月は水無兄は勿論五月姉も恵姉も大好きだよ。」



一番最初に答えたのは睦月、やっぱり純粋で素直な娘なんだなぁとつくづく思う。



「睦月の言う通りだよにぃに、三人共私の大切な家族みたいなもんだからね~♪」



ニカッと笑みを見せながら当たり前だと言わんばかりに答えるめぐ、彼女の性格と笑顔には私を明るくする効果が有るんだろう。めぐの笑顔を見れば釣られて笑顔になってしまう。



「私も好きに決まってるよ。当たり前っしょ?」



………はぁ、睦月はやっぱり大切な家族だしめぐは唯一無二の親友。口喧嘩したり邪魔したりはするけれど嫌いなんかじゃ無い。むしろこんな感じなのも悪くないって思うから何時まで経っても兄ぃを独占出来ないんだろうな…



まぁ、最終的に勝者は一人。その一人になれれば良い…




「あはは~♪皆やっぱり一緒だね。(今朝は睦月のせいで失敗した。ならば今夜は兄ぃの布団に忍び込む…勝負はまだまだこれから。)」



「水無兄、今日は皆でご飯食べよ?(五月姉が行動を起こすとすれば多分今夜…だったら僕はお風呂を一緒に入ることで先回りする!)」



「おぉっ、晩御飯なら私に任せてよにぃに!(えへへ~♪にぃにの為にご飯作れるなんて久々だな~♪)」



「うん、皆仲良くが一番だな。」



私達の答えが嬉しかった笑顔で三人纏めて抱きしめてくれる兄ぃ。大丈夫だよ兄ぃ、私達はずっと一緒だよ…




「「「ま、最後に勝つのは私(僕)だけどね♪」」」









~~~私の僕の妹愛しすこん弟愛ぶらこん)育成記・おしまい~~~

姉キャラを期待した読者様へ…



本っ当にすいませんでしたぁぁぁぁぁっ!!





柳の作風と言えば姉(自称)なのに姉キャラ出ないとか柳は馬鹿なの?死ぬの?



一応姉キャラメインの短編も構想だけなら有りますが執筆は未だに出来てませんorz



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