7日目
男児の成長を祝う端午の節句
風を切って走る鯉のぼりに、勇猛な武者人形や鎧兜を飾り柏餅を食べてお祝いする。
一年ぶりに出す五月人形を前にそらから君は浮かぬ顔。
「ねえママー、このお人形さん悪者なの?」
「えっ!?何で?違うよ?」
何故そんな勘違いをしたのかさっぱりわからない。
「じゃあなんで紙で目隠しされて、段ボールに封印されてるのよ。可哀想だよ!」
確かになかなかの虐待案件。
「いや、違うよ!和紙で包んであるのはお人形さんが傷まないように守る為で、段ボールに入っているのは………………えっと、しっかりお休み出来るように?」
「ふ~ん、このお人形さん病弱なんだね。」
「ええっーー!!!」
確かにそう思われても仕方ない!!
一年に一度しか現れない深窓のお人形……。
武者人形だけどね?
五月人形が病弱なおっさん人形だったら、物凄く嫌だな。
「病弱だから休んでるじゃないよ!あー何て言うのかな、出番を待ってるっていうかね?…悪いのを退治出来るように、力を蓄える為に箱に入っているというか…。」
「あっ!ポケモンボールと一緒!?」
「………………うん、一緒、一緒!!」
うん、もうそれでいいや☆
棚に飾られた武者人形、鎧兜姿に日本刀、左右には弓と矢、その姿はなかなかに勇ましい。
「ねえママー、これも一緒に入れてあげて!」
持ってきたのは、パパのマシンガン (サバゲー用) にオモチャの戦車。
「この子これから悪者退治するんでしょ?刀と弓だけじゃ足りないでしょ!」
それから、恐竜とドラゴンの人形を一緒に置いた。
「一人じゃ大変だからお供も入れてあげよう!」
恐竜とドラゴンをお供に引き連れ、マシンガン片手に戦車に跨がる武者人形。
「よし!これで絶対負けないね!」
「ああ…………うん。強そうだね。」
完全に戦力過多じゃなかろうか。
絶対に当たりたくない最強パーティーの出来上がり。
「お店の人、もっと最初から沢山武器入れて売ってくれたらいいのにねぇ。」
「う〜ん、そうだね。」
オプションパーツとして売り出したら、もしかしたら売れるかもしれないね。
「ねえねえママ、子どもの日って何で柏餅たべるの?」
来ましたね!!
子どもの何故な〜ぜ!!
きっと聞かれるだろうと思って、ママ調べておいたよ(エヘン)
「柏餅の葉っぱはね、新しい芽が出るまでずっと落ちないから、ずっとお家が続いて行くって意味で縁起がいいからなんだよ〜。それと葉っぱの形が兜に似ているからなんだって!」(ドヤッ)
「へ〜、そうなんだぁ。じゃあ何で桃太郎はきび団子なの?」
「えっ、分かんない。」
ほんの数秒で鼻っ柱をへし折られる。
さーせん。調べておきます!(テヘッ)
「まあ、いいや。これ食べたらまたお人形さんと遊ぼう!」
「そらから君は本当にお人形さんが好きだねえ。」
そらから君はお人形さん遊びが大好き。
ほぼ毎日遊んでる。
「だってお人形さんは、そらから君と遊ぶの嫌がらないもん。」
「えっ!?」
「ママは忙しいと遊んでくれないけど、お人形さんはいつでも遊んでくれるでしょ。」
「!!!!!!!!」
そらから君の発言にショックを受ける。
えっ、私が相手しないからお人形さんと遊んでたの?
毎日、黙々と遊んでたから楽しいんだと思ってたけど、
本当は寂しかったの!!!???
そらから君と遊ぶのを嫌がったつもりはなかったけれど、忙しい時に邪険に扱ってしまった事はあったかもしれない……。
「ご、こめんね、そらから君。ママ、そらから君と遊ぶの嫌じゃないよ、楽しいよ。
これからもっと、沢山遊ぶようにするね」
「本当?じゃあ今日はわんわん王国、柏餅大食い競争するから、柏餅を盗みに来た悪者の役やって!」
「やるやる!やるよ!!任せて!1日中やっちゃうよ!!」
嬉しそうなそらから君。
ああ、いままで寂しいの我慢してたんだね………。
ごめんね。ママ心を入れ替える!
それから一週間、そらから君の遊びに付き合いまくる。
「さあ!そらから君!今日は何して遊ぼうか?お人形?お絵かき?それとも公園にでも行ってボール遊びでもしようか?」
「………………。」
じろりと睨むそらから君。
「?どうしたの?元気ないね。調子悪い?」
「ううん、元気。……ねえママ、ママって友達いないの?」
「えっ?何急に?」
ふーっとため息を吐くそらから君。
「あのねママ。ママと遊んであげたいけど、そらから君もうママに付き合うの疲れちゃったの。」
「はっ?」
「そらから君たまには一人で遊びたいの、いい加減に子離れしてくれる?」
「はぁぁぁぁぁー!!!???」
突然の親離れ。
あと良く子離れなんて言葉知ってたね。
「ママも早く遊んでくれる友達見つけた方がいいよ。」
「……………………ウン。」
「でも、時々なら遊んであげるね。」
「……………………アリガトウ。」
それから更に一週間後
「ママ!どうして遊んでくれないの!!!」
「!!!!!?????」
離れればくっつく、くっつけば離れる。
そらから君と私の親離れ子離れは、まだしばらくかかりそうです。