第七話 言語問題ともう一つのチート
「(どうしよう、意思疎通ができない。)」
彼は言語の壁に絶賛ぶつかり中である。
「huvhヴぃwivikmss!」
「えーと、キャンユースピってちょっと!」
言語の確認をする間もなく彼の手に手錠がかけられようとした。
「閃光!」
しかし彼の放った光の魔法によって警備員は一瞬怯んだ。
その隙をついて彼は逃げ出した。逃げ出そうとした。
もう一度彼は超音飛行を発動しようとした。
しかしできなかったのだ。
「あれ!?カミサマ!発動しないんですけど!」
「あー、それか・・・。」
「値段をまけてもらう代わりにチート能力の機能に制限があってな・・・。」
「魔法の属性は一度に三属性まで、回復魔法は使えない、という制限なのだ。」
「今貴様は光魔法を使っただろう?それで火属性が使えなくなったのだ。」
「三十分経過するまで火属性は使えぬ。」
「そういうのは早く言ってくださいよおおお!!!」
彼は必死で、死ぬ気で逃げる。
何だか分からないが銃まで持ってこられては逃げるしかない。
火薬の炸裂音が響き、銃弾が跳んでくる。
しかしそれはオートバリアによって防がれ、彼に届くことはない。
「飛行!!」
警備員たちが攻めきれない内に彼は飛行魔法を発動した。
「さよーならー!!」
この魔法は時速100㎞程度の速度しか出ないが人間の足よりは圧倒的に早い。
こうして彼は警備員から何とか逃げ切ることに成功した。
それから数十分後彼らは反省会をしていた。
「そういうのは早く言ってくださいね・・・。」
「すまん、今回のは我が悪かった。」
「謝ってくれるならいいですけど・・・。」
「そしてソーマよ、もう分かったと思うが貴様はこの世界の言語を話せぬ。」
「完全に忘れてましたよ、カミサマと最初から話せましたから。」
「そこでだ。貴様には今から言語の勉強をしてもらう!」
「え、僕にチート能力渡したときみたいにインプットできないんですか?」
「いやそれは無理だ。」
「ええ?何でですか?」
「もう余裕が・・・。」
「ないんですね。」
「ああ。」
謎の微妙な空気が流れる。
「と、とにかく!今回の反省を活かして勉強会ってことですね!」
「あ、ああ!その通りだ!」
こうして神を教師とした異世界言語勉強会が始まった。
ー一方その頃ー
「グハハハハハ!!」
「遂に手に入れたぞ!!」
「これさえあれば俺は無敵だ!」
「苦労して探したかいがあったぞ!」
「この勇者の遺産をな!」
そう叫んだねじれた角を持つ青い肌の軍人に近い恰好をした男は指輪を装着した。
「この能力は・・・なるほどな。」
男が指輪を身に着けるや否や夥しい数の魔物が集まってきた。
しかしその魔物達は男に襲い掛かる様子はない。
むしろ男を主君と仰ぐようにその場にひざまずいたのだ。
「百鬼夜行か!これは大当たりだ!グハハハハハ!!」
「これがあれば忌々しいあのクソどもと対等に立てる!」
「魔物ども最初の命令だ!ここら一帯の魔物を片っ端から集めてこい!」
「GYAAAAAAAAAAAAA!!!」
まるでお預けを解かれた犬のように、主君からの命令を待ちわびていた魔物達は歓喜の叫びを上げた。
その光景を見た魔人ズールはその顔をニヤリと歪め上機嫌そうに自らの屋敷へと帰っていった。
この世界にまた一人チート能力を持つ者が現れた。